2014年02月05日

クーベリック&パリ管のベートーヴェン:交響曲第6番「田園」


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クーベリックは、本盤に収められた「田園」を含め、1971年から1975年にかけてベートーヴェンの交響曲全集をスタジオ録音している。

当該全集は、各交響曲によってオーケストラが異なるという類例のない独特のものであった。

しかしながら、これはクーベリックが意図して行ったというよりは、DG側の事情による側面が大きかったと言わざるを得ない。

当時のDGは、カラヤンやベームといった人気・実力を兼ね備えた大物指揮者を擁しており、同時期にはベーム&ウィーン・フィル(1970〜1972年)、更にはカラヤン・ベルリン・フィル(1974〜1976年)によるベートーヴェンの交響曲全集がスタジオ録音されている。

このような状況の中で、クーベリックが、当時の手兵バイエルン放送交響楽団と全集をスタジオ録音することは大変難しい状況に置かれていたと言わざるを得ない。

実際に、クーベリックは全集の録音開始前に、「第7」をバイエルン放送交響楽団と録音(1970年)しており、それは、全集中のウィーン・フィルとの「第7」の演奏(1974年)よりも数段上の名演なのであるが、長らくお蔵入りで現在でも入手困難であるところだ(かつてレコード芸術誌が企画・監修した「蘇る巨匠たち」シリーズでCD化されていた)。

このことは、クーベリックがこの当時に置かれていた困難な状況を察するに余りあると言えるだろう。

ともあれ、クーベリックが、バイエルン放送交響楽団とベートーヴェンの交響曲全集を録音できなかった(「第9」のみがバイエルン放送交響楽団と録音である)のは、前述の「第7」の名演に鑑みると残念ではあるが、いずれにしても本盤に収められた「田園」は、素晴らしい名演と高く評価したい。

オーケストラはパリ管弦楽団であり、このオーケストラは指揮者によっては気が乗らない粗雑な演奏をすることもあるのだが、本演奏においては、クーベリックの統率の下、その持ち味を活かした色彩感溢れる美演を披露しているのが素晴らしい。

「田園」という楽曲の性格に鑑みれば、クーベリックとしてもバイエルン放送交響楽団を起用できなかったのは残念ではあったであろうが、本演奏に関してはパリ管弦楽団の起用はプラスに働いていると言えるだろう。

ホルンや木管楽器の雰囲気豊かな美しい音色が、本演奏に華を添える結果となっていることを忘れてはならない。

クーベリックの指揮は、「田園」の標題には必ずしも拘泥しない純音楽的なアプローチであり、ゆったりとしたテンポによる重厚にして彫りの深い表現で、深沈とした含蓄のある奥行きを感じさせるのが素晴らしい。

第1楽章の反復を省略しているが、テンポがゆったりしていることから、冗長さに陥らないためにもこれは賢明であった。

録音については、かつてSACDハイブリッド盤が発売されていたが、これが今一つ鮮明とは言い難い冴えない音質であった。

しかしながら、本盤のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤は見違えるような鮮明な高音質に生まれ変わり、このようなクーベリックによる素晴らしい名演を望み得る最高の高音質SACDで味わえることを大いに喜びたい。

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コメント一覧

1. Posted by ムトー   2012年08月27日 21:56
5 いつも楽しく拝見させていただいております。
本件とは関係のあるような、無いような話になりますが、第一楽章の反復について。
僕自身、田園交響曲の第一楽章の反復は、すべきではないと思います。 田舎に着いた時の晴れ晴れとした気持ちというのが、二度繰り返されることに違和感を持ちます。
運命交響曲の第四楽章も同じで、運命に打ち勝つ瞬間というのが、二回繰り返されることに違和感があります。
形式を越えた部分での話になりますが、管理人さんは如何お考えでしょうか?
2. Posted by 和田   2012年08月27日 22:03
まずは、ムトーさん、コメントありがとうございます。
私もムトーさんと全く同意見です。
それどころか、ベートーヴェンの演奏は、すべて反復を省略してほしいとさえ思っています。
我々はもう、ベートーヴェンの交響曲は全て聴き飽きるくらい聴き過ぎており、実演ならまだしも、録音で、反復を忠実に実行するというのは、私としては辟易とします。
何でも「楽譜に忠実に」励行すべきではありません。
同じくモーツァルトの交響曲の演奏についても言えると思います。
3. Posted by ムトー   2012年08月27日 23:45
ご返答ありがとうございます。
モーツァルトで言えば、僕はジュピターの反復は、本当に聴いていられなくなります。

僕がこのブログを発見して、一年半くらいになります。
僕はフルトヴェングラーが好きなのですが、カラヤン(ライブ)も好きです。 ムラヴィンスキーも、セルも好きですが、クナッパーツブッシュも好きです。
管理人さんの、世評にとらわれない、公平なご意見が、見ていて本当に心地よいです。
今後も見続けますので、続けられる限り、頑張って下さい。
4. Posted by 和田   2012年08月28日 03:55
ブロガー冥利に尽きるありがたいお言葉をいただいて恐縮です。

私のスタンスは、ご承知の通り、客観性を持って聴くことをモットーとしており、それがまた読者の方からは、「こいつは何が好きか嫌いかわかんねーぞ。没個性的だ。」と思われているかもしれません。

むしろ、ムトーさんのように好意的に受け止めて下さる読者の方が少ないのかな、と思ったりします。

頑張ります。一人でも多くの読者に名曲の名演を紹介し続けます。

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Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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