2014年02月21日
トスカニーニ&NBC響のドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」(XRCD)
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まさに強烈無比な演奏だ。
フルトヴェングラーはトスカニーニによるベートーヴァンの交響曲の演奏を指して、「無慈悲なまでの透明さ」と評したとのことであるが、従来CD盤のような劣悪な音質で本演奏を聴く限りにおいては、そうした評価もあながち外れているとは言えないのかもしれない。
ドヴォルザークの交響曲第9番と言えば、米国の音楽院に赴任中のドヴォルザークのチェコへの郷愁に満ち溢れた楽曲であるだけに、チェコの民族色溢れる名旋律の数々を情感豊かに歌い抜いた演奏が主流であると言えるが、トスカニーニは、そうした同曲に込められたチェコの民族色豊かな味わいなど、殆ど眼中にないのではないかとさえ考えられるところだ。
演奏全体の造型はこれ以上は求め得ないほどの堅固さを誇っており、その贅肉を全て削ぎ落としたようなストレートな演奏は、あたかも音で出来た堅牢な建造物を建築しているような趣きすら感じさせると言えるだろう。
そして、速めのテンポを基調とした演奏の凝縮度には凄まじいものがあり、前述のように音質が劣悪な従来CD盤で聴くと、素っ気なささえ感じさせる無慈悲な演奏にも聴こえるほどだ。
しかしながら、音質については後述するが、本XRCD盤で聴くと、各フレーズには驚くほど細やかな表情づけがなされているとともに、チェコ風の民族色とはその性格が大きく異なるものの、イタリア風のカンタービレとも言うべき歌心が溢れる情感が込められているのがよく理解できるところであり、演奏全体の様相が強烈無比であっても、必ずしも血も涙もない無慈悲な演奏には陥っていない点に留意しておく必要があるだろう。
そして、このようなトスカニーニの強烈無比な指揮に、一糸乱れぬアンサンブルを駆使した豪演を展開したNBC交響楽団の卓越した技量にも大きな拍手を送りたい。
いずれにしても、本演奏は、トスカニーニの芸風が顕著にあらわれるとともに、ドヴォルザークの交響曲第9番を純音楽的な解釈で描き出した演奏としては、最右翼に掲げられる名演と高く評価したい。
音質については、従来CD盤が様々なリマスタリングやK2カッティングなどが行われてきたところであるが、前述のようにいずれも劣悪な音質で、本演奏の真価を味わうには程遠いものであった。
トスカニーニ=快速のインテンポによる素っ気ない演奏をする指揮者という誤った見解を広めるには格好の演奏であったとさえ言えるところだ。
ところが、本XRCD盤の登場によって、ついに本演奏の真価のベールを脱いだと言っても過言ではあるまい。
音質の鮮明さ、臨場感、音圧の凄まじさのどれをとっても、従来CD盤とは別格の高音質であり、トスカニーニの演奏が、決して無慈悲な演奏ではなく、各フレーズにどれほどの細やかな表情づけが行われているのか、そして情感が込められているのかを理解することが漸く可能になったと言えるところだ。
いずれにしても、本XRCD盤は、トスカニーニの演奏に関する前述のような誤解を解くに当たっても大変意義の大きいものであり、トスカニーニによる同曲の圧倒的な名演を、このような高音質のXRCD盤で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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