2014年02月28日
ジンマンのシューベルト:交響曲第7(8)番「未完成」 、他
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ベートーヴェン、シューマン、マーラーなどの交響曲全集で好評を博しているジンマン&チューリヒ・トーンハレ管弦楽団が、ついにシューベルトの交響曲全集の録音を開始した。
先日発売されたブラームスの交響曲全集については、短期間で、しかもライヴ録音で完成させたのに対して、今般のシューベルトの交響曲全集は、2年の歳月をかけてスタジオ録音されるとのことであり、これはジンマンがいかにシューベルトを特別視するとともに、深く愛着を抱いているかの証左であると言えるだろう。
いずれにしても、全集の完成が無事に終了することをこの場を借りて心から祈念しておきたい。
本盤は、当該全集の第1弾であり、交響曲第7(8)番「未完成」を軸として、ヴァイオリンと管弦楽のための作品集という組み合わせ。
ジンマンは、シューベルトを心から愛するとともに、初めて購入したスコアが「未完成」であったとのことであり、本演奏のスタジオ録音に際しては、並々ならない覚悟で臨んだものと拝察されるところだ。
ジンマンのことであり、「未完成」については第3楽章以降の補筆版、あるいはシューベルト自身が書き残した冒頭の数小節だけでも録音するのではないかとの期待もしていたところであるが、見事に肩透かしを喰わされたところである。
しかしながら、演奏自体はジンマンの個性が全開の強烈無比な演奏だ。
これまでのシューベルトの演奏とは一味もふた味も異なるため、好き嫌いが大きく分かれる演奏と言えるのかもしれない。
特に、第1楽章の無慈悲なまでの峻烈な演奏は凄まじさの限りであり、同曲の流れるような美しい旋律の数々をことごとく歌わせないなど、その徹底ぶりには戦慄を覚えるほどである。
これに対して、第2楽章は、テンポこそやや速めであるが、第1楽章とは対照的に、シューベルトならではの名旋律の数々を情感豊かに歌わせているのが特徴である。
時として、第1楽章と同様の無慈悲な表現も垣間見られるが、それだけに、旋律を情感豊かに歌わせている箇所が際立つとともに、その美しさには抗し難い魅力に満ち溢れている。
ジンマンの演奏は、いわゆる現代楽器を使用した古楽器奏法、ピリオド演奏を旨としており、「未完成」においては、果たしてうまくフィットするのか若干の不安を抱いていたところである。
しかしながら、ジンマンの前述のようなアプローチの巧みさも相俟って、聴き手によっては拒否反応を示す人がいても何らの不思議はないが、筆者としては、同曲の新たな魅力を十分に堪能することが可能であった。
ジンマンのピリオド演奏によるアプローチが、多くの指揮者によって演奏されてきた「未完成」にある種の清新さを加えるのに成功しているとさえ言えるだろう。
とりわけ、第2楽章における前述のような情感の豊かさは、ピリオド演奏にありがちな無味乾燥な演奏に陥ることを避けるのに大きく貢献している。
いずれにしても、本演奏は、手垢に汚れていた「未完成」を洗い流したような清新さを持った素晴らしい名演と高く評価したい。
併録のヴァイオリンと管弦楽のための作品集も、「未完成」と同様のピリオド演奏であるが、旋律の歌わせ方の情感の豊かさにも出色のものがあり、ジンマンと、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団の第1コンサートマスターであるアンドレアス・ヤンケの抜群の相性の良さが生み出した珠玉の名演奏に仕上がっていると評価したい。
今後、本全集は第4弾まで続くことが決定しているが、今後の続編にも大いに期待したい。
音質は、2011年のスタジオ録音だけに、本従来CD盤でも十分に満足できるものである。
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