2022年08月27日
プレトニョフ&ロシア・ナショナル管のチャイコフスキー:交響曲第1番「冬の日の幻想」/スラヴ行進曲
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プレトニョフによる新しいチャイコフスキーの交響曲チクルスについては、既に後期3大交響曲集が発売されており、それは近年のプレトニョフの充実ぶりが窺える素晴らしい名演であった。
そして、最初期の第1番であるが、後期3大交響曲集の演奏に優るとも劣らないような圧倒的な名演と高く評価したい。
プレトニョフは、前回のチャイコフスキーの交響曲全集(DG)を完成した後は、ベートーヴェンの交響曲全集やピアノ協奏曲全集において、聴き手の度肝を抜くのに十分な超個性的な演奏を繰り広げてきたが、今般のチャイコフスキーの第1番では、むしろオーソドックスと言ってもいいような堂々たる円熟の演奏を展開している。
かかるアプローチはこれまでの後期3大交響曲集においても同様であったが、こういった点にプレトニョフのチャイコフスキーに対する深い愛着と畏敬の念を感じることが可能であるのではないだろうか。
もちろん、オーソドックスとは言ってもそこはプレトニョフ。
奇を衒ったあざとい解釈ではないという意味であり、プレトニョフならではの個性は十二分に発揮されている。
冒頭のゆったりとしたテンポは、もしかしたら同曲演奏史上でも最も遅い部類に入るかもしれない。
ところが主部に入るとテンポを大幅にアップさせる。
要は、テンポの緩急を思い切って施しているのが本楽章の特徴であり、それでいていささかも不自然さを感じさせないのは、プレトニョフがチャイコフスキーの音楽を自家薬篭中のものとしているからに他ならない。
こうしたテンポの緩急を大胆に施しつつも、ロシア風の民族色を強調したあくの強い表現や、表情過多になることを極力避けており、只管純音楽的なアプローチに徹しているようにさえ思えるほどであり、プレトニョフは、チャイコフスキーの交響曲を他の指揮者にとってのベートーヴェンの交響曲ように捉えているのではないかとさえ感じられるところだ。
各楽器のバランスを巧みに取った精緻な響きはプレトニョフならではのものであり、他の指揮者による演奏ではなかなか聴き取ることが困難な音型を聴くことが可能なのも、本演奏の醍醐味と言えるだろう。
第2楽章〜終楽章は一転して正攻法の演奏であるが、もっとも、随所において効果的なテンポの振幅を施したり、第2楽章の4本のホルンによる壮麗な迫力、そして、終楽章におけるトゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫に満ち溢れた強靭さにおいてもいささかも欠けるところはないところであり、後期3大交響曲集の演奏と同様に、いい意味での硬軟バランスのとれた円熟の名演に仕上がっていると評価したい。
これまでの第4番〜第6番での各レビューでも記したが、残る第2番、第3番及びマンフレッド交響曲の素晴らしい円熟の名演を大いに期待したいところだ。
併録のスラヴ行進曲は、中庸のテンポを基調としつつ、聴かせどころのツボを心得たオーソドックスな名演と高く評価したい。
ただし、終結部は打楽器を最大限に響かせたり、反復を省略するなど、必ずしも一筋縄ではいかないプレトニョフの芸術の真骨頂があると言えるだろう。
それにしても、ペンタトーンレーベルによる本チクルスの音質は素晴らしい。
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