2014年03月11日

クレンペラー&フィルハーモニア管のベートーヴェン:交響曲第9番、「レオノーレ」序曲第3番、「シュテファン王」序曲


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クレンペラーによるベートーヴェンの交響曲全集がシングルレイヤーによるSACD盤で発売されるというのは、大変喜ばしいことであるが、本盤にはその大トリとして、交響曲第9番と、「レオノーレ」序曲第3番、「シュテファン王」序曲が収められている。

EMIは、過去の名演を100種選定して、昨年末からSACD化して発売しているが、今般のシングルレイヤーによるSACD化に際しても同様に、LP時代のカップリングやジャケットにも強い拘りを有しており、それ故に本盤の2枚組の収録曲としてはいささか物足りないCDとなっているものと思われる。

第9交響曲は1枚で収録できるのに、あとの序曲2曲は別に発売すべきではなかったのではないか。

価格面も含め、そうした不満は否めないが、ここまで細かく分けて発売する必要はどこにあるのかと苦言を呈しておきたい。

演奏自体は、悠揚迫らぬ素晴らしい名演だ。

ベートーヴェンの「第9」の名演としては、フルトヴェングラー&バイロイト祝祭管弦楽団によるドラマティックな超名演(1951年)の印象があまりにも強烈であるが、当該名演とは対照的に、微動だにしないゆったりとしたインテンポによって曲想を精緻に、そして格調高く描き出しているクレンペラーによる重厚な名演もまた、格別な味わいに満ち溢れている。

クレンペラーは各楽器を力強く演奏させており、とりわけ木管楽器をやや強めにするのはユニークであるが、いささかも無機的な演奏に陥ることがなく、どこをとっても彫りの深い音楽が紡ぎ出されていく。

巧言令色などとは全く無縁であり、飾り気が全くない微笑まない音楽であるが、これはまさに質実剛健な音楽と言えるのではないだろうか。

全体の造型はきわめて堅固であるがスケールは極大であり、いずれにしても、本演奏は、前述のフルトヴェングラーによる名演も含め、古今東西の様々な指揮者による名演の中でも、最も峻厳で剛毅な名演と高く評価したい。

独唱陣はいずれも優秀であるが、とりわけバリトンのハンス・ホッターとメゾ・ソプラノのクリスタ・ルートヴィヒは比類のない名唱を披露している。

クレンペラーの統率の下、フィルハーモニア管弦楽団や同合唱団も最高のパフォーマンスを示しているのも、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。

2曲の序曲もクレンペラーの長所が最高度に発揮された立派な演奏で、その気宇壮大な表現には圧倒される。

特に「レオノーレ」序曲第3番はベートーヴェンの音楽の真髄を極めた快演で、クレンペラーの芸格の高さを如実に示す名演奏である。

音質は、1957年(序曲は1963年、1959年)のスタジオ録音であるが、従来CD盤でも、そして数年前に発売されたHQCD盤でも、比較的満足できるものであった。

ところが、前述のように、今般、待望のシングルレイヤーによるSACD化がなされるに及んで、圧倒的な高音質に生まれ変わった。

音質の鮮明さ、合唱や独唱、オーケストラ演奏が見事に分離して聴こえる明瞭さ、音圧の凄さ、音場の拡がりのどれをとっても一級品の仕上がりであり、あらためてシングルレイヤーによるSACD盤の潜在能力の高さを思い知った次第である。

いずれにしても、クレンペラーによる素晴らしい名演を高音質SACDで味わうことができるのを大いに喜びたい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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