2014年04月15日
カラヤン&ベルリン・フィルのチャイコフスキー:後期3大交響曲集(SACD)
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カラヤンは独墺系の指揮者としては広範なレパートリーを誇ったところであるが、その中でもチャイコフスキーの楽曲を自家薬篭中とも言うべき得意のレパートリーとしていた。
特に、3大交響曲集と称される交響曲第4番〜第6番については、それこそ何度も繰り返し演奏・録音を行っているところだ。
クレンペラーやフルトヴェングラー、ベーム、ザンデルリンク、ヴァントなど、チャイコフスキーの交響曲の録音を遺した独墺系の指揮者は多いが、その録音の量においてカラヤンの右に出る指揮者は皆無であったと言っても過言ではあるまい。
そうしたカラヤンによる数多くのチャイコフスキーの交響曲の録音の中で、随一の名演は何かと言われれば、私は躊躇なく本盤に収められた1971年にEMIにスタジオ録音を行った第4番〜第6番の演奏を掲げたい。
確かに、最晩年にウィーン・フィルを指揮してスタジオ録音した第4番〜第6番の演奏も、波乱に満ちた生涯を送ったカラヤンが自省の気持ちを込めてその生涯を顧みるという人生の諦観とも言うべき味わい深さが感じられるところであり、演奏の持つ深みにおいては至高の高みに聳え立つ名演と言えるところだ。
しかしながら、カラヤンの演奏の美質の一つでもあった鉄壁のアンサンブルを駆使した音のドラマの構築と言った点においては、いささか物足りない面もあると言えるところであり、カラヤンらしさという意味においては異色の演奏と言えなくもない。
1970年代後半に完成させたカラヤンによる唯一の交響曲全集は、まさにカラヤン&ベルリン・フィルの黄金コンビが最後の輝きを放った時期のものであり、演奏の完成度においては出色のものがあると言えるだろう。
これに対して、本盤の演奏は、実演的な迫力に満ち満ちた凄みのある名演と言えるのではないだろうか。
一糸乱れぬ鉄壁のアンサンブルは当然のことであるが、全盛期のベルリン・フィルとともに構築した音のドラマは圧巻の一言。
ブリリアントなブラスセクションの響きや唸るような厚みのある低弦の重厚さ、そして雷鳴のようなティンパニの轟きは凄まじいほどのド迫力であり、演奏全体に漲る気迫はあたかもライヴ録音を思わせるほどの凄さと言える。
どこをとっても凄まじさの限りと言えるが、とりわけ、第4番の第1楽章終結部における猛烈なアッチェレランドや、第6番の第1楽章の展開部における低弦の圧倒的な迫力は、全盛期のカラヤン&ベルリン・フィルだけに成し得た圧巻の至芸と言っても過言ではあるまい。
チャイコフスキーの交響曲第4番〜第6番の名演としては、同時代に活躍した旧ソヴィエト連邦出身の巨匠ムラヴィンスキーの超名演(1960年)があまりにも名高いが、本盤の演奏は、それに唯一比肩し得る至高の超名演と高く評価したい。
音質については、1970年代のEMIによる録音ということで、従来CD盤の音質が必ずしも芳しいものではなく、それはHQCD化されてもあまり改善は見られなかったところだ。
特に、第4番については、マスターテープが損傷しているということで、これ以上の高音質化については絶望的であると考えていたところであるが、今般のSACD化で大変驚いた。
従来CD盤やHQCD盤とはそもそも次元が異なる見違えるような、そして1970年代前半のEMIによる録音とは到底信じられないような鮮明な音質に生まれ変わっており、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、カラヤンによる至高の超名演を、SACDによる高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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