2014年03月19日
フルトヴェングラー&ベルリン・フィルのベートーヴェン:交響曲第5番、「エグモント」序曲、大フーガ(SACD)
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フルトヴェングラー指揮によるベートーヴェンの交響曲第5番の演奏については数多くの録音が遺されており、いずれも名演であるが、その中でも最も評価が高いのは本盤に収められた、戦後復帰コンサートの3日目である1947年5月27日のライヴ録音と、既に昨年1月にEMIよりSACD化されて話題を呼んだ1954年のスタジオ録音であるということは論を待たないところだ。
両演奏はあらゆる意味で対照的な性格を有しているが、フルトヴェングラーの指揮芸術の懐の深さをあらわすものとして、クラシック音楽ファンの間でも長年に渡って愛好されてきた名演である。
1954年盤は、前述のようにSACD化によって見違えるような鮮度の高い音質に生まれ変わっており、音質におけるハンディはほぼ解消されたと言ってもいいだろう。
これに対して1947年盤については、かねてから演奏は最高であるが音質が劣悪との刻印が押されているものであり、かかる音質の劣悪さは数年前にSHM−CD盤が発売されても殆ど変わることがなかった。
さらに一昨年、アウディーテより、本演奏の2日前の戦後復帰コンサート初日のライヴ録音がにわかには信じ難い鮮明な音質で発売されたことから、ますます当該1947年盤の立場が危うくなってきていたところであった。
そのような中での今般のシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤の登場は、まさに起死回生とも言うべき壮挙と言えるだろう。
もちろん、最新録音のような鮮明な音質になったわけではないが、少なくともこれまでの数々のリマスタリング盤やSHM−CD盤とは次元の異なる高音質に生まれ変わっており、この歴史的な超名演をかなり満足できる音質で堪能できるようになった意義は極めて大きいと言わざるを得ない。
演奏は、フルトヴェングラーの実演がいかに凄まじいものであったのかがわかるような壮絶な超名演だ。
楽曲の本質を鋭く抉り出していくような彫りの深い表現が全体を支配しており、第2楽章の濃厚な味付けはむせ返るようなロマンティシズムに満ち溢れている。
終楽章のエンディングに向けて徐々にテンポを加速し、頂点に向けて畳み掛けていくような凄みのあるアッチェレランドを駆使しているが、それでいて全体の堅固な造型がいささかも弛緩することがないのは、フルトヴェングラーだけに可能な圧巻の至芸と言えるだろう。
併録の「エグモント」序曲や大フーガも、濃厚なロマンティシズムとドラマティックな迫力に満ち溢れた素晴らしい超名演だ。
フルトヴェングラーは、仮に小品であっても、交響曲に接するのと同じように、楽曲の内容の精神的な深みを徹底的に追求する姿勢で演奏に臨んだが、これら両曲の演奏においても同様であり、その演奏の彫りの深さにおいては、他の指揮者が束になっても到底かなわない。
いずれにしても、このようなフルトヴェングラーによる歴史的な遺産とも言うべき至高の超名演を、シングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤という、現在望み得る最高品質のパッケージメディアで味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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