2014年03月29日
ムラヴィンスキー&レニングラード・フィル/ショスタコーヴィチ:交響曲第8番(1982年ライヴ)
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かつてPHILIPSからもリリースされていたムラヴィンスキー晩年の有名なライヴ音源。
他のレーベルからもリリースされていたが、いずれも入手が難しいものばかりだったため、この廉価盤のALTO(旧REGIS)の復刻盤は貴重なもので、何よりも音質が安定している。
というのも、かつてPHILIPSからリリースされていたアルバムはやや高めのピッチで収録されていたため、全体に甲高い音に感じられるという弱点があったが、こちらはピッチが正常なものに修正されているのが有難い。
演奏はショスタコーヴィチの交響曲第8番の決定盤と長らく言われ続けているだけあって、これ以上は考えられないほど凄絶なものだ。
「第8」は、作曲者生前の公式発表によれば、ナチス侵攻による苦難とそれに打ち克つソヴィエト連邦を描いた作品ということになるが、それはショスタコーヴィチによる巧みなカモフラージュであり、スターリンの独裁による圧政が重ね合わされていたのだ、という説もある。
後者については、ソ連崩壊後だから言えることで、当時、そんな思い切ったことができただろうか、という疑問も残るが、少なくとも、ムラヴィンスキーの演奏を聴く限り、後者に説得力があるように思う。
圧政に苦しむ者、虐げられた者を鞭打つような、情け容赦のなさ、一片の慈悲のなさが、ムラヴィンスキーの強い意志とレニングラード・フィルの鋼鉄のアンサンブルによって再現されているが、その重く、暗い生活を、旧ソ連市民へ向け、世界へ向け、告発しているかのようではないか。
ライヴでありながら、一点の隙も見せない凄みが作風とマッチして、聴く者の背筋をも凍らせるのである。
激しさだけではなく、落ち着いた静けさの中にも常に緊張感が漂い、どのフレーズにも熾烈で痛切な思いが込められている。
レニングラード・フィルのアンサンブルやソロの巧さには本当に舌を巻くほどで、ムラヴィンスキーの他のライヴ録音と比較しても、完成度や録音状態はトップクラスであろう。
真摯に曲に立ち向かった極めて説得力の強い名演奏である。
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