2014年04月03日
ミュンシュ&パリ管のブラームス:交響曲第1番(ART盤)
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ミュンシュはライヴ録音においては当然のこと、スタジオ録音でも灼熱のように燃え上がる圧倒的な熱演を披露した。
本盤に収められたブラームスの交響曲第1番は、最晩年にミュンシュがパリ管弦楽団とともにスタジオ録音を行った4点の録音のうちの1点に相当するが、死を10か月後に控えた指揮者とは思えないような力強くも情熱に満ち溢れた圧倒的な豪演に仕上がっている。
冒頭の序奏からしてひたすら音楽を前進させようという強靭な意思が漲っている。
その後は、変幻自在のテンポ設定や思い切った強弱の変化などを駆使して、ドラマティックの極みとも言うべき劇的な演奏を展開する。
とりわけ第1楽章や終楽章におけるトゥッティに向けて畳み掛けていくような気迫は、我々聴き手の度肝を抜くのに十分な圧倒的な迫力を誇っている。
第2楽章などにおける心を込め抜いた歌い方は、豊麗な情感に満ち溢れており、切れば血が噴き出てくるようなミュンシュの熱き歌心がひしひしと伝わってくるなど実に感動的だ。
パリ管弦楽団も、火の玉のような燃え上がったミュンシュの壮絶な入魂の指揮に必死でついていっており、アンサンブルが乱れる寸前のところで踏みとどまっているかのようなスリリングな演奏が、本演奏の圧倒的な迫力に更なる拍車をかけているのを忘れてはならない。
いずれにしても、本演奏は、ミュンシュが成し遂げた様々な名演の中でも、同時期に録音された幻想交響曲(1967年)と並んで最上位に掲げられる超名演であると高く評価したい。
ただ、ブラームスの「第1」の演奏としては、例えば「名曲名盤300選」などで多くの音楽評論家がトップに推薦しているように本演奏が絶対的かつ理想的な名演かと言うと、一つの方向性としてはあり得るとは思うが、何か違うのではないかと言わざるを得ない。
ましてや、とある影響力の大きい音楽評論家が本演奏について、「フルトヴェングラー以上にフルトヴェングラーらしいドイツ的な名演」などと評しているが、これほどフルトヴェングラーを、そしてミュンシュを冒涜する言葉はないだろう。
それは、フルトヴェングラーによる同曲の様々な録音を聴けば容易に理解し得るところであるし、これはあくまでもミュンシュによる演奏なのだ。
筆者としては、本演奏が至高の超名演であることを十分に認めはするものの、同じように熱演であっても、剛毅にして重厚さを保ちつつ速めのインテンポで一気呵成に全体を巧みに纏め上げたベーム&ベルリン・フィルによる超名演(1959年)の方によりブラームスらしさを感じるということを、この場を借りて指摘をしておきたい。
録音は従来盤が全く冴えない音質で大きな問題があったが、数年前に発売されたHQCD盤では、相当程度音質は改善されたように思われる。
しかし、今般、最新のART(アビー・ロード・テクノロジー)によるリマスタリングによって、驚異的な高音質に蘇った。
最新のART技術によって蘇ったこのCDの演奏を、手持ちの旧盤と比較しながら聴いてみたのだが、音が伸びない不満を感じる旧盤に対し、この新盤は、全く別の演奏かと聴きまごうほど、ダイナミックレンジが大幅に改善されている。
特に最強音の音域の広がりは、想像を絶するほどであり、ミュンシュのスケールの大きい白熱の演奏の真価が、より鮮明に伝わってくるようになっているのだ。
ミュンシュ&パリ管弦楽団による歴史的かつ奇跡的な名演奏を、このような最新のリマスタリング技術で鮮やかに蘇った高音質録音で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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