2022年04月17日
太陽の恵みを受けたかのような誇らしい高揚感、溌剌とした輝き、クライバーン&コンドラシンのチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番
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本盤のような演奏を歴史的名演と言うのであろう。
アメリカのテキサス生まれのヴァン・クライバーン(1934年7月12日 - 2013年2月27日)が、旧ソヴィエト連邦の威信をかけて行われた記念すべき第1回チャイコフスキー国際コンクールで優勝した直後に行われたスタジオ録音ではあるが、ここでは、コンクールでの優勝の興奮が支配しているように感じられてならない。
当時のクライバーンの超絶的な技巧と、途轍もない生命力が凄まじいまでの迫力を見せ、あたかもライヴ録音であるかのような熱気に満ち溢れているからだ。
このチャイコフスキーに一貫しているのは溌剌とした太陽のような輝きである。
それは単に辣腕の名手が聴かせるドラマティックで、エネルギッシュな熱演というだけではない。
抒情的で詩的なフレーズにも太陽の恵みを受けたかのような誇らしい高揚感があり、それが聴き手をどこか晴れやかな幸福感に誘ってしまうという稀に見る演奏となっている。
停滞せずに常に前に駒を進めていく演奏、しかもそこには即興性があり、それが演奏をさらにスリリングで、緊迫感溢れるものにしていく。
それでいて決して不自然でも作為的でもない、聴き手を紛れもなくチャイコフスキーの世界に誘い、陶酔させていく奇跡的名演なのである。
当時、ソヴィエト連邦の気鋭の指揮者であったコンドラシンの指揮も圧倒的であり、数あるチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の名演の中でも、トップの座を争う名演と高く評価したい。
コンクールの審査員には、リヒテルやギレリスなど錚々たる顔ぶれが揃っていたとのことであり、今から思えば政治色が審査に反映されなかったことは奇跡のような気もするが、これらの面々に絶賛されたというのも当然のことのように思われる。
残念なことであるが、クライバーンはこの時が一番凄かった。
その後は、自らの名前を冠するコンクールの名前のみで知られるピアニストに甘んじていたのは、はなはだ残念なこととは思う。
それでも、このような歴史的名演を遺したことは、後世にもクライバーンの名前は不滅であることの証左と言えよう。
録音は金管楽器などに音場の狭さを感じるが、ピアノのリアルな音など、眼前で演奏が行われるかのような鮮明さだ。
コンクールには賛否両論があるが、才能発掘の点で成果を挙げたのは事実であり、この名盤もコンクール直後に生まれたことを銘記しておきたい。
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