2014年04月16日
ワルター&フランス国立管のモーツァルト:交響曲第38番「プラハ」/ワーグナー:ジークフリート牧歌(1955年ライヴ)
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モーツァルト「プラハ」のワルターの演奏は造型的にも、細部の表情づけの点でも、すでに4年後のコロンビア盤の解釈を先取りしているが、あの演奏にオーケストラの張り切った厚みと、ワルターの若々しさをつけ加えた感じである。
それにしてもワルターのほとばしり出るように燃え立つエネルギーは、いかに実演とはいえ、まさにすばらしい。
フランスの会場は一体に残響に乏しく、オーケストラの音色にも艶がないが、聴いているうちに、その生々しさがかえって長所に思われてくる。
第1楽章の導入部からして、きりりと引き締まったテンポとリズムで素朴な表現を見せ、しかもその中でやりたいことをやりつくしており、表面的な洗練への意志は全くない。
ヴィブラートをいっぱいにかけた歌は、オーケストラがワルターの指示を、一生懸命に守っている感じだ。
主部に入ると、非常なスピードとなる。
コロンビア盤も他の指揮者に比べれば速いほうだが、それさえ遅く思われるほどこれは速い。
おそらくシューリヒトに匹敵するだろう。
その速いテンポによる生命力は、徹底的に歌いぬかれる旋律美によってさらに輝きを増し、第2主題でぐっとテンポを落とすロマンティシズムと共に、ワルターの「プラハ」を聴く醍醐味がここにある。
第2楽章も速めのテンポで、いささかも繊細ぶらず、思い切って旋律を豊麗に歌う。
美しさのかぎりであり、われわれは音楽に身を任し、ただただ陶酔するのみである。
しかも歌いぬくだけでなく、そこに胸がときめくような、えもいわれぬたゆたいが見られる。
フィナーレはその異常な速さ(シューリヒトよりさらに速い)に驚かされる。
オーケストラが合わないくらいのテンポだが、ことによると舞台に立ったワルターが、内部から突き上げてくる情熱によって、即興的にこのテンポを採ったのかも知れない。
実にスリル満点、誰しもが興奮を禁じ得ないであろう。
「ジークフリート牧歌」はワルターの数多い録音の中で最も魅力あるものの一つ。
それは弦の響きや音色にライヴならではの生々しい人間味があり、それを放送局のマイクが十二分にとらえているからである。
ワルターのこの曲への愛情がいたるところにみなぎっている。
造型的にも若いころほど逸脱せず、後のコロンビア盤ほどとりすましてもいない。
フランスのオケはホルンやトランペットが軽すぎるとはいえ、オーボエとクラリネットのデリケートな敏感さはさすがにセンス満点だ。
なお、録音は放送局が取ったもので、さらに仏ターラ社の優れたリマスタリング技術によって復刻されただけあって明快だ。
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