2014年09月18日
F=ディースカウ&ペライアのシューベルト:歌曲集「冬の旅」
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本盤には、シューベルトの最晩年の傑作である歌曲集「冬の旅」が収められている。
歌曲集「冬の旅」は、恋に破れ、さすらいの旅に出た若者を歌った救いようもない絶望的な暗いストーリーを、シューベルトならではの寂寥感溢れる美しい旋律が散りばめられた24曲にも及ぶ歌曲で描き出した傑作である。
その内容の深さには尋常ならざるものがあると言えるところであり、シューベルトの他の作品で言えば、最後の3つのピアノ・ソナタ(第19番〜第21番)や弦楽五重奏曲ハ長調、交響曲第9番「ザ・グレート」などにも比肩する崇高さを湛えていると言えるだろう。
いずれにしても、同歌曲集は、歌曲の王と言われたシューベルトの膨大な数に及ぶ歌曲の中でも最高傑作であるだけでなく、あらゆる作曲家による歌曲の中でもトップの座に君臨する不朽の名作と言っても過言ではあるまい。
これだけの名作だけに、フィッシャー=ディースカウは、同歌曲集をスタジオ録音だけでも7度という途轍もない数の録音を行っているところだ。
その中で、随一の名演を1つ選ぶということであれば、筆者としては、本盤に収められたマレイ・ペライアとともに演奏を行ったスタジオ録音(1990年)を掲げたい。
1990年といえば、フィッシャー=ディースカウにとって晩年の時期に相当し、声の衰えはいかんともしがたいものがあるが、それだけに以前の録音よりも本歌曲集の本質に鋭く切り込んでいくという気概漲る圧倒的な名唱を披露している。
フィッシャー=ディースカウの歌唱は、あまりにも巧いために、その巧さが鼻につくケースも散見されるところであるが、本演奏においては、巧さにおいては申し分がないものの、技巧臭などはいささかも感じさせず、むしろシューベルト晩年の音楽の寂寥感や深みを心行くまで堪能させてくれるのが素晴らしい。
あたかも、フィッシャー=ディースカウが主人公である若者の化身となったような趣きさえ感じられるところであり、これだけ同歌曲集の魅力を堪能させてくれれば文句は言えまい。
もっとも、かかるフィッシャー=ディースカウによる歌唱は、同曲異演盤でも他の演奏の追随を許さない名演に仕上がっていたが、歌曲集「冬の旅」の場合は、その内容の奥行きのある深遠さに鑑みて、より楽曲の心眼に鋭く切り込んでいくような凄みといった点で本盤を掲げたところだ。
マレイ・ペライアのピアノ演奏についても同様のことが言えるところであり、シューベルトによる美しい旋律の数々を情感豊かに描き出しており、その表現には、凄みと彫りの深さがあり、フィッシャー=ディースカウによる名唱の引き立て役としても十分にその任を果たしていると言えるだろう。
したがって、本演奏を名演と評価するのにいささかも躊躇するものではないが、フィッシャー=ディースカウの声の衰えを考慮すれば、唯一無二の名演と評価するのは困難であることを指摘しておきたい。
音質については、1990年のデジタル録音であり、フィッシャー=ディースカウの息遣いやマレイ・ペライアのピアノタッチが鮮明に再現されている。
いずれにしても、フィッシャー=ディースカウ&マレイ・ペライアによる名演を、高音質録音で味わうことができるのを歓迎したい。
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