2014年04月23日
ホッター&ムーアのシューベルト:歌曲集「冬の旅」(1954年スタジオ録音)
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
不世出のワーグナー歌手ハンス・ホッターの《冬の旅》の録音は、1942年に始まって計4種あるが、レコードとして一番まとまっているのは2度目のこのムーアとのものかもしれない。
《冬の旅》こそ声楽家の到達点であるかのように、世に名演が溢れている。
ヒュッシュの全曲盤(1933年録音)は今なお現役盤であり、特にバリトン系の歌手には名演が多いというのも曲の性格だろう。
声域はテノールのために書かれ、中には第1稿は高すぎてあとで少し下げたりし、ハイ・バリトンが多い。
《冬の旅》に、人生を絶望し、孤絶の歌を聴こうとする人には、同じホッターでも1969年、東京文化会館小ホールでのライヴが薦められよう。
この演奏にはホッターの歩んできた人生が見えてくるような感動がある。
《冬の旅》の主人公は《美しき水車小屋の娘》の失恋の傷みに続く世界である。
まだ青年なのである。
しかしわれわれは《冬の旅》というと、何か老成した者の歌のような受け取り方をしがちであるが、この主人公は「霜置く頭」で、霜のために白髪になったと錯覚してよろこんだのも束の間、また元の黒い髪にかえったのを悲しむほどに若いのである。
ホッターの最後の録音は人生の諦観の中にあるが、1954年の録音はまだ青年の失意の中にある。
最初の録音での果てしないカンタービレには、晩年のホッターからは想像できないほどの甘い夢があるが、このムーアとの録音ではそれが是正され、シューベルトの端正な形が示されている。
1曲1曲、何と味わいが深いことか。
ロッテ・レーマンも女声ながら突きつめた劇的《冬の旅》を聴かせ、フィッシャー=ディースカウは解剖学的なまでに細分化したシューベルトを聴かせる。
それぞれの歌手がそれぞれの《冬の旅》を聴かせるが、この盤はその意味で最も普遍的なシューベルトを聴かせる。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。