2022年10月11日
🫤ヴァント&北ドイツ放送響のドビュッシー:交響的断章「聖セバスティアンの殉教」/ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)[SACD]
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ヴァントと言えば、最晩年のブルックナーの交響曲の神がかり的な超名演の数々がいの一番に念頭に浮かぶ。
その他にも、シューベルトやブラームス、ベートーヴェンの交響曲の名演などの印象も強く、本盤に収められたムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」やドビュッシーの交響的断章「聖セバスティアンの殉教」を演奏しているヴァントのイメージが今一つ浮かんで来ないと言わざるを得ない。
むしろ、ヴァントの芸風からすれば、極めて珍しい録音と言っても過言ではないとさえ思われるところであるが、意外にもヴァントはこれら両曲に深い愛着を抱き、たびたび演奏してきたとのことである。
それだけに、例えば、組曲「展覧会の絵」についても、たどたどしいところがいささかもなく、各場面の描き分けを巧みに行った見事な演奏を展開していると言えるだろう。
独墺系の指揮者で同曲を得意としていた指揮者としてはカラヤンが掲げられるが、カラヤンの演奏のように豪華絢爛にして豪奢な演奏ではなく、カラヤンの演奏と比較すると随分と地味な印象も受けるところだ。
テンポはやや速めで一貫しているが、前述のような場面毎の巧みな描き分け、そして随所に聴かれる独特のニュアンスの豊かさは、まさに老巨匠ならではの名人芸とも言えるところであり、内容の豊かさという意味においては、他のどの指揮者の演奏にも引けを取らない高水準の演奏に仕上がっている。
ロシア風の民族色とは殆ど無縁であり、必ずしもスケールの雄大さを感じることもできない演奏ではあるが、筆者としては、ヴァントの指揮芸術の奥の深さを十二分に味わうことが可能な素晴らしい名演と高く評価したい。
ドビュッシーの交響的断章「聖セバスティアンの殉教」も、およそヴァントの芸風とは結びつかない楽曲であるが、厳格なスコアリーディングに基づく緻密な演奏を旨とするヴァントの芸風との相性は意外にも良く、純音楽的な意味においては、これ以上は求め得ないような演奏に仕上がっていると言えるのではないだろうか。
フランス風のエスプリであるとか、同曲の官能的な描写性とは殆ど無縁の演奏ではあるが、いわゆる純音楽的という意味においては、他のどの指揮者による演奏よりも優れた名演であると高く評価したい。
音質は、従来CD盤が発売された後、リマスタリングが一度もなされていないものの、十分に満足できるものであった。
しかしながら、今般、ついにSACD化が行われることによって大変驚いた。
従来CD盤とは次元が異なる見違えるような鮮明な音質に生まれ変わった言えるところであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第である。
いずれにしても、ヴァントによる素晴らしい名演を、SACDによる極上の高音質で味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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