2014年05月02日
アンチェル&チェコ・フィルのドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」/ヴァイオリン協奏曲(スーク)、他(1963年ライヴ)
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1963年、ザルツブルク音楽祭でのパッション漲る名ライヴで、個人的にはスタジオ録音より、こちらの方を愛聴している。
累代のチェコ・フィルの指揮者はドヴォルザークの交響曲第9番の録音を行っているが、いずれも個性的な名演揃いである。
ターリッヒにはじまり、本盤のアンチェル、そしてクーベリックやノイマン、そして近年のマーツァルなど、これらの大指揮者による同曲の演奏は、現在においても名演としての地位を確立していると言っても過言ではあるまい。
これらの名演に優劣を付けることは困難であるが、本盤に収められたアンチェルによる演奏は、ターリッヒによる演奏が録音が古くて今一つ音質が冴えないことを考慮に入れれば、当ライヴはチェコ・フィルの累代の指揮者による同曲演奏の中でも出色の出来映えと言ってもいいのではないだろうか。
アンチェルによる演奏は、どちらかと言うと聴かせどころのツボを心得たサービス精神旺盛な演奏とは言い難いと言える。
もちろん、ターリッヒによる演奏のように即物的に徹した演奏とは言えないが、それでもどちらかと言えば派手さはなく、一切の虚飾を配したストレートなアプローチとさえ言えるだろう。
ティンパニの効果的な使い方や低弦の歌わせ方には出色のものがあるものの、華麗さとは程遠い渋味のある演奏とさえ言えるところだ。
しかしながら、一聴すると淡々と流れている曲想の端々には、両親や妻子をアウシュビッツで虐殺されるなど激動の悲劇的な人生を送ってきたこの指揮者だけが描出可能な底知れぬ奥深い情感が込められていると言えるところであり、その独特の味わい深さには抗し難い魅力に満ち溢れている。
巧言令色とは正反対の飾り気のない演奏であるが、その演奏の深沈たる奥行きの深さは、まさにいぶし銀とも言うべき独特の輝きを放っていると高く評価したい。
ドヴォルザークのヴァイオリン協奏曲はやはりスークが一番だ。
1つ1つの音が完全に身についており、自分の音楽として表現しているからである。
激しい生命力や訴えかけ、懐かしい愛情のほとばしり、暖かい親しみ、チャーミングな節まわしが、豊かな郷土色と一体化して聴く者の心に涙をにじませるのだ。
アンチェルの指揮は音楽を意味深く語りかけつつ、美感を保持した見事なものだ。
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