2022年10月10日
人生の辛酸を舐め尽くした巨匠👴波乱に満ちた生涯を自省の気持ちを込めて振り返るような趣🪶ワルター&コロンビア響のブラームス:交響曲第4番
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ワルターは最晩年にコロンビア交響楽団を指揮して、自らのレパートリーの数々のステレオ録音を行ったが、その中にはブラームスの交響曲全集も含まれている。
当該全集の中でもダントツの名演は、本盤に収められた第4番ということになるのではないだろうか。
それどころか、ワルターが我々に残してくれた数々の名演の中にあって、これは5本の指に入る素晴らしい演奏だ。
ワルターによるブラームスの交響曲の名演としては、ニューヨーク・フィルを指揮した第2番の豪演(1953年)がいの一番に念頭に浮かぶが、今般の全集中の第2番にはとてもそのような魅力は備わっておらず、本演奏の優位性は揺るぎがないと言える。
第4番はブラームスの晩年の作品であることもあって、孤独な独身男の人生への諦観や枯淡の境地をも感じさせる交響曲である。
本演奏におけるワルターのアプローチは、何か特別な解釈を施したりするものではなく、むしろ至極オーソドックスなものと言えるだろう。
しかしながら、一聴すると何の仕掛けも施されていない演奏の端々から滲み出してくる憂愁に満ち溢れた情感や寂寥感は、抗し難い魅力に満ち溢れている。
晩秋に落葉が一葉一葉ひらひらと舞い落ちて来る様な冒頭からして、これほど切なさが胸に募る演奏は今日まで他で聴いた事がない。
これは、人生の辛酸を舐め尽くした巨匠が、その波乱に満ちた生涯を自省の気持ちを込めて振り返るような趣きがあり、かかる演奏は、巨匠ワルターが最晩年に至って漸く到達し得た至高・至純の境地にあるとも言っても過言ではあるまい。
いずれにしても、本演奏は、ブラームスの「第4」の深遠な世界を心身ともに完璧に音化し得た至高の超名演と高く評価したい。
小編成で重厚さに難があるコロンビア交響楽団ではあるが、ここではワルターの統率の下、持ち得る実力を最大限に発揮した最高の演奏を披露しているのも、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2022年10月11日 02:22

2. Posted by 和田 2022年10月11日 06:45
ワルターがコロンビア響を指揮したブラームスの第4交響曲は、もうずっと以前から愛聴していました。音楽を意識して聴くようになった最初の頃に集めた少数のLPの中に、既にこのワルター盤が入っていたように思います。そして当時からはかなりの長い時間がたった今日でも、本盤は依然として価値を保ち続けています。いや、もっと深い部分でその価値を受け止めることが出来るようになったというべきかも知れません。当ワルター盤はそのような存在意義を感じさせる演奏内容なのです。ここではすべての事柄がしみじみとした情感でもって語られています。第1楽章の第1主題も終楽章のパッサカリアも、長い人生を黙々と歩んできたあとに到来した深い自覚や悟り、決定的な敗北感や挫折感、そこから生じる諦めの気持ち、ちょっとしたことにも期待をもってしがみつこうとする執着やあせり等々を、強く意識させずにはおきません。長い人生を耐えてきた者にようやく訪れた晩秋とでも形容すればよいのでしょうか。すべてが濃い晩秋の色あいに染まってしまっています。過剰なロマンティシズムと謗る勿れ!人は誰しも年齢を加えてくると、様々な感慨とともに自らの来し方を顧みなければならないものなのなのです。我々はその時になったら、いったいどう顧みればよいのでしょうか。時に、この交響曲を作曲したブラームスは52歳であと12年の生命を残しており、これを録音したワルターは83歳で死の年まで約3年を残していました。