2014年05月17日
シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンのマーラー:交響曲第4番
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素晴らしい出来映えだ。
あまりに官能的で陶酔的な美をきわめた1997年ライヴの「第9」が大反響を呼んだシノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンによるマーラーであったが、これからさらに2年後の「第4」ライヴという興味深い録音である。
ブーレーズの透徹されて隙のない音、スコアと対峙するような解釈の「第4」も素晴らしいのだが、シノーポリのこの優しく包み込まれるような解釈はどうだろう。
出だしは例によって歩が遅いし、強烈なアゴーギクが掛けられた間奏部、また再現部では急に歩を速めたりと例によって昔から変わっていないスタイルなのだが、シュターツカペレ・ドレスデンがこのシノーポリズムを完全に飲み込んだ上で紡ぎ出す珠玉の旋律からはマーラーの楽しみ方に別の一つの道筋を付けていると今更ながら気が付かされた思いだ。
「第9」同様、シノーポリの様々な仕掛けがシュターツカペレ・ドレスデンの様式美によってうまく補完され、血肉化されている。
「第9」に関しては、そのためちょっとマイルドになり過ぎたと感じたものだが、「第4」なら何の不満もない。
ここでもやはり「第9」のときと同じく、フィルハーモニア管盤(1991年)と比較して両端楽章でそれぞれ2分ほど演奏時間が長くなっているのが目立った特徴。
なかでも終楽章は実際の時間以上に、出だしから極端に遅く感じられる。
最も目立つ特徴は終楽章、特に後半の「天上の音楽」の描写になってから、非常に遅いテンポがとられていることだろう。
これは指揮者自身が聴衆を前にした解説(時間の関係で音声は途中までだが、ライナーノートには全文収録しており、内容はやや散漫ながら、シノーポリの知性と教養が良く分かる)で述べている「子供の感じた非現実の天国」を表現したのだと言える。
ここでソリストに起用されたのはマーラー歌いとしてすでにキャリアも豊富なバンゼ。
ブーレーズ盤とはガラリと変わって、停止するかのように息の長いフレージングをシノーポリの意図を汲んで完璧に歌い尽くしている。
そうかと思えばシノーポリは第1楽章の主題が回帰するところでは一転、急加速。
交替してソプラノの甘美なメロディが登場するとまたもやグッとテンポを落としてくる。
このあたり、極端なテンポ・ルバートを基調としたシノーポリ美学の真髄といえるだろう。
死を目前にしたシノーポリが、必ずしも天上の世界は幸せばかりではないと、心に訴えかけてくるかのようだ。
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