2014年06月07日
トスカニーニ&NBC響のシューベルト:交響曲第8番「未完成」、第9番「ザ・グレイト」
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このCDの録音は、カーネギーホールでそれぞれ行われた、トスカニーニの最晩年の83歳と86歳の時の録音である。
いずれも80歳を超えた人の指揮ぶりとは全く思えないくらい、気迫に富んだ、乾坤一擲の力演を聴かせる。
「未完成」の方は、いつものトスカニーニ節が幾分なりを潜め、ナイーブで温かみのある印象がして、聴いていて何か救われる気がして、トスカニーニにもこういう一面もあるのだということが分かる。
しかし、その核心はトスカニーニらしい一本筋が入っており、結果としてトスカニーニしか成しえない「未完成」が形づくられる。
この演奏は数ある「未完成」の録音の中でも傑出した1枚には違いあるまい。
一方、「ザ・グレイト」はいつものトスカニーニ節炸裂といった感じで、全曲緊張感に包まれ、一分の隙もないような演奏を聴かせる。
これが86歳のときの指揮とは恐れ入るとしか言いようがない。
トスカニーニの指揮ぶりは、フルトヴェングラーとは正反対に、あらゆる場面を明確に、メリハリを効かせて演奏するのが特質だ。
そのためオーケストラに対しては、常に最高の技術力を求め、妥協は一切しなかったようだ。
この「ザ・グレイト」の録音は、そんなトスカニーニの指揮の特徴が集約されている。
このときまでにトスカニーニは何回も「ザ・グレイト」の指揮をしてきたはずだが、このCDの録音が凄いのは、初めてこの曲を指揮をするような緊張感が漂っていることだ。
トスカニーニが素晴らしいのは、現在の指揮者にも営々とその影響が引き継がれていることだ。
フルトヴェングラーは“神様”であっても、結果として一代で完結してしまった。
誰も“神様”の真似などはしないし、しようとしても出来ないのだ。
これに対しトスカニーニに指揮には、現代人の我々にも通じる何かが残されている。
例えば、フリッツ・ライナー、シャルル・ミュンシュ、ジョージ・セル、ゲオルク・ショルティなどにトスカニーニの遺産は引き継がれ、さらに、カラヤン、バーンスタインそして我らがマエストロ小澤征爾などにバトンタッチされている。
また、現在第一線で活躍するノリントン、ラトルらにも多かれ少なかれ影響を与えているのである。
ただ、残念なことにトスカニーニのCDは録音の質が良くないことだ。
オーケストラの音の響きの豊かさがまったくといっていいほど伝わってこないのだ。
だから、トスカニーニのCDは、トスカニーニに興味がある人か、指揮の特徴に興味がある人しか推薦できない。
フルトヴェングラーさえ豊かな音響をとらえた録音が残されているのにだ。
筆者は、トスカニーニに質のよい録音が残されていたら、現在においてもフルトヴェングラーの人気を凌駕していたのではとさえ思う。
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