2014年12月14日
ヴァント&ベルリン・ドイツ響のムソルグスキー(ラヴェル編):組曲「展覧会の絵」、他
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ヴァント&ベルリン・ドイツ交響楽団によるライヴ・チクルス第2弾が、今般、国内盤で、しかも分売で発売されることになったのは、演奏水準の高さからしても、多くのクラシック音楽ファンにとって大朗報と言えるだろう。
ヴァントと言えば、長年に渡って音楽監督をつとめ、その後は名誉指揮者の称号が与えられた北ドイツ放送交響楽団との数々の名演が軸となる存在と言えるが、ベルリン・フィルやミュンヘン・フィル、そしてベルリン・ドイツ交響楽団とも、素晴らしい名演の数々を遺している。
ベルリン・ドイツ交響楽団は、ベルリン・フィルの陰に隠れた存在に甘んじているが、一流の指揮者を迎えた時には、ベルリン・フィルに肉迫するような名演を成し遂げるだけの実力を兼ね備えたオーケストラである。
ましてや、指揮者がヴァントであれば問題はなく、その演奏が悪かろうはずがない。
本盤に収められた、ハイドンの交響曲第76番、モーツァルトのセレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」、ムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」は、ヴァントの知られざるレパートリーであったが、いずれも素晴らしい名演と高く評価したい。
本盤のメインであるムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」については、手兵北ドイツ放送交響楽団との1999年のライヴ録音が存在していることから、本盤の演奏はその4年前の演奏、ヴァントにとって現時点で2種目の録音ということになる。
ヴァントの芸風からすれば、極めて珍しい録音と言っても過言ではないとさえ思われるところであるが、意外にもヴァントは同曲に深い愛着を抱き、たびたび演奏してきたとのことである。
それだけに、本演奏においてもたどたどしいところがいささかもなく、各場面の描き分けを巧みに行った見事な演奏を展開していると言えるだろう。
独墺系の指揮者で同曲を得意としていた指揮者としてはカラヤンが掲げられるが、カラヤンの演奏のように豪華絢爛にして豪奢な演奏ではなく、カラヤンの演奏と比較すると随分と地味な印象も受けるところだ。
テンポはやや速めで一貫しているが、前述のような場面毎の巧みな描き分け、そして随所に聴かれる独特のニュアンスの豊かさは、まさに老巨匠ならではの名人芸とも言えるところであり、内容の豊かさという意味においては、他のどの指揮者の演奏にも引けを取らない高水準の演奏に仕上がっている。
ロシア風の民族色とは殆ど無縁であり、必ずしもスケールの雄大さを感じることもできない演奏ではあるが、筆者としては、ヴァントの指揮芸術の奥の深さを十二分に味わうことが可能な素晴らしい名演と高く評価したい。
なお、1999年の演奏との違いは、オーケストラの音色以外に殆どなく、聴き手の好みによる問題と思われるところだ。
ハイドンの交響曲第76番は、ヴァントがブルックナーの交響曲第6番との組み合わせで、コンサートで頻繁に採り上げていた。
CDとしてはケルン放送交響楽団との演奏(1973年)が存在するとともに、DVD作品としては北ドイツ放送交響楽団とのライヴ録音(1996年)が存在する。
本演奏は、その前年の1995年の演奏ということになるが、一聴すると無骨とも言える各旋律の端々から漂う独特のニュアンスや枯淡の境地さえ感じさせる情感には抗し難い魅力に満ち溢れていると言えるところであり、CDとしては、ヴァントによる同曲演奏の総決算とも言うべき素晴らしい名演と評価したい。
モーツァルトのセレナード第6番「セレナータ・ノットゥルナ」については、1990年の北ドイツ放送交響楽団とのライヴ録音が存在していることから、本演奏は5年後のものと言うことになるが、演奏自体はハイドンの交響曲と同様であり、ヴァントによる同曲演奏の掉尾を飾るに相応しい素晴らしい名演と評価したい。
音質は、1995年のライヴ録音であり、十分に満足できるものである。
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