2014年06月16日
ショルティのモーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」
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ショルティは、先輩格のハンガリー人指揮者で同様に米国を舞台に指揮活動を行ったライナーやオーマンディ、セルなどと異なり、オペラの分野において極めて幅の広いレパートリーを有していたことで知られている。
とある影響力の大きい某音楽評論家の酷評によって、その実力の割には不当に貶められているショルティであるが、同時代に活躍した史上最高のレコーディング・アーティストであるカラヤンにも比肩し得るほどの数多くのオペラ演奏・録音を行った功績は、もっと広く知られてもいいのではないかとも考えられるところだ。
ショルティは、その芸風との相性があまり良くなかったということもあって、モーツァルトの交響曲については、わずかしか演奏・録音を行っていないが、オペラについては、主要4大オペラのすべてをスタジオ録音するなど、確固たる実績を遺している。
本盤に収められた歌劇「フィガロの結婚」の演奏は、そうした一連のモーツァルトの主要オペラの録音の頂点に立つものと言えるだろう。
ショルティの芸風は、切れ味鋭いリズム感とメリハリの明晰さであるが、オペラ、とりわけモーツァルトのオペラを演奏する際には、そうした芸風を全面に打ち出すことをやや抑制しているような印象を受ける。
それは、特に歌手陣への配慮によるところも大きいと言えるところであり、オペラを熟知したショルティの深謀遠慮と言った側面もあるのではないかと考えられるところだ。
加えて、1980年代に入ると、前述のような芸風に円熟味や奥行きの深さが加わってきたとも言えるところであり、その意味においては、本盤の演奏は、ショルティによるモーツァルトのオペラ演奏の一つの到達点とも言うべき名演と言えるのかもしれない。
もちろん、本演奏においても、楽想を明晰に描き出していくというショルティならではのアプローチは健在であり、他の指揮者による同曲のいかなる演奏よりも、メリハリのある明瞭な演奏に仕上がっていると言えることは言うまでもないところだ。
そして、本盤で素晴らしいのは、何と言っても歌手陣である。
さすがはオペラを熟知したショルティならではの考え抜かれた的確なキャスティングと言えるところでであり、伯爵夫人役のキリ・テ・カナワ、スザンヌ役のルチア・ホップ、ケルビーノ役のフレデリカ・フォン・シュターデ、フィガロ役のサミュエル・レイミー、伯爵役のトーマス・アレン、バルトロ役のクルト・モルなど、当代一流の豪華歌手陣が最高の歌唱を披露しているのが素晴らしい。
また、必ずしも一流とは言い難いロンドン・フィルも、ショルティの確かな統率の下、持ち得る実力を十二分に発揮した名演奏を展開している点も高く評価したい。
音質も、英デッカによる見事な高音質録音であり、1981年のスタジオ録音とは思えないような鮮度を誇っているのも素晴らしい。
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