2014年08月13日

ヴァント&ベルリン・ドイツ響のベートーヴェン・ワークショップ〜2つの「田園」&「運命」(リハーサル風景付き)


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ヴァントと言えば、長年に渡って音楽監督を務め、その後は名誉指揮者の称号が与えられた北ドイツ放送交響楽団との数々の名演が軸となる存在と言えるが、ベルリン・フィルやミュンヘン・フィル、そしてベルリン・ドイツ交響楽団とも、素晴らしい名演の数々を遺している。

ベルリン・ドイツ交響楽団は、ベルリン・フィルの陰に隠れた存在に甘んじているが、一流の指揮者を迎えた時には、ベルリン・フィルに肉薄するような名演を成し遂げるだけの実力を兼ね備えたオーケストラである。

ましてや、指揮者がヴァントであれば問題はなく、その演奏が悪かろうはずがない。

数年前にライヴ・ボックス第1弾が発売され、クラシック音楽ファンの間で話題となったヴァント&ベルリン・ドイツ交響楽団との一連のライヴ録音の第2弾が、このたび国内盤、分売化されることになったのは、クラシック音楽ファンにとってもこの上ない喜びである。

このうち、本盤に収められているのは2種(1992年及び1994年)のベートーヴェンの交響曲第5番及び第6番の演奏と、リハーサル風景(1992年のみ)である。

ヴァントによるベートーヴェンの交響曲の演奏と言えば、何と言っても1980年代に、手兵北ドイツ放送交響楽団とともにスタジオ録音した唯一の交響曲全集(1984〜1988年)が念頭に浮かぶ。

当該全集以前の演奏もテスタメントなどによって発掘がなされているが、ヴァントのベートーヴェン演奏の代表盤としての地位にはいさかも揺らぎがない。

しかも、当該全集については、現在では入手難であるが、数年前にSACDハイブリッド盤で発売されたこともあり、ますますその価値を高めていると言っても過言ではあるまい。

その他のベートーヴェンの交響曲第5番及び第6番の演奏と言えば、1992年に北ドイツ放送交響楽団とともに行ったライヴ録音が存在している。

本盤に収められた演奏は、同年の演奏とさらに2年後の演奏ということになり、とりわけ1994年の演奏については、現時点において、ヴァントによる両曲の最後の録音ということになる。

そして、演奏自体も、もちろん1992年の演奏も優れてはいるが、1994年の演奏、それも交響曲第6番が格段に優れた名演と言えるだろう。

前述の全集も、ヴァントの峻厳な芸風があらわれたいかにもドイツ色の濃厚な名演揃いであったが、いささか厳格に過ぎる造型美や剛毅さが際立っているという点もあって、スケールがいささか小さく感じられたり、無骨に過ぎるという欠点がないとは言えないところだ。

それに対して、本盤の1994年の演奏は、おそらくはヴァントの円熟のなせる業であるとも思われるところであるが、全集の演奏と比較すると、堅固な造型の中にも、懐の深さやスケールの雄大さが感じられるところであり、さらにグレードアップした名演に仕上がっていると言えるのではないだろうか。

もちろん、華麗さなどとは無縁の剛毅さや無骨さは相変わらずであるが、それでも一聴すると淡々と流れていく曲想の端々からは、人生の諦観を感じさせるような豊かな情感が滲み出していると言えるところであり、これは、ヴァントが晩年になって漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるのではないかと考えられるところだ。

そして、演奏全体に漂っている古武士のような風格は、まさに晩年のヴァントだけが描出できた崇高な至芸と言えるところであり、とりわけ、ベートーヴェンの交響曲第6番については、ヴァントによる数ある同曲の演奏の中でも、総決算とも言うべき最高の名演と高く評価したい。

もちろん、交響曲第5番や、1992年の両曲の演奏についても、前述のように優れた名演であることは言うまでもないところである。

リハーサル風景も、ヴァントの厳格な音楽作りを窺い知ることができる貴重なものだ。

音質は、1990年代のライヴ録音であり、十分に満足できるものである。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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