2014年06月21日
ブーレーズのストラヴィンスキー:春の祭典、ペトルーシュカ(旧盤)
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本盤には、ブーレーズが指揮したストラヴィンスキーの3大バレエ音楽のうち、「春の祭典」と「ペトルーシュカ」が収められている。
このうち、「春の祭典」については、様々な指揮者による同曲の演奏史上でも今なおトップの座に君臨する至高の超名演と高く評価したい。
ブーレーズは、同曲を本演奏も含め3度に渡って録音を行っている。
最初の録音はフランス国立放送交響楽団との演奏(1964年)であり、クリーヴランド管弦楽団との本演奏(1969年)が続き、そしてDGへの録音となった同じくクリーヴランド管弦楽団との演奏(1991年)が存在している。
このうち、最初の1964年盤については、圧倒的な名演との評価がなされてはいるものの一般配布されていなかったこともあって現在でも入手難。
3度目の1991年盤は、一般論としては立派な名演と言えるのではないかと考えられる。
もっとも、ブーレーズの芸風は、1990年代に入ってDGに自らのレパートリーを再録音するようになってからは、かつての前衛的なアプローチが影を潜め、すっかりと好々爺となり、比較的オーソドックスな演奏をするようになってきたように思われる。
もちろん、スコアリーディングについてはより鋭さを増しているものと思われるが、当該指揮によって生み出される音楽は比較的親しみやすいものに変容しており、これはまさしくブーレーズの円熟のなせる業ということになるのではないだろうか。
したがって、立派な円熟の名演ということには間違いないが、いわゆる普通の演奏になってしまっているとも言えるところであり、ブーレーズならではの強烈な個性が随分と失われてきていると言えるのではないかと思われる。
これに対して、本演奏は徹頭徹尾、ブーレーズならではの個性が全開の快演である。
思い切った強弱の変化や切れ味鋭い強烈なリズムを駆使するなど、これ以上は求め得ないような斬新な解釈を施すことによって、ストラヴィンスキーによる難解な曲想を徹底的に鋭く抉り出しており、その演奏のあまりの凄まじさには戦慄を覚えるほどである。
これほどの先鋭的な解釈が施されたのは、おそらくは同曲演奏史上でも空前にして絶後であり、ブーレーズによる本演奏によって初めて、同曲が完全に音化されたと言っても過言ではあるまい。
ブーレーズの凄みのある指揮の下、一糸乱れぬアンサンブルで最高の演奏を繰り広げたクリーヴランド管弦楽団にも大いに拍手を送りたい。
このような豪演を聴いていると、セル時代の全盛期のクリーヴランド管弦楽団の鉄壁のアンサンブルと超絶的な技量の凄さをあらためて認識させられるところだ。
「ペトルーシュカ」については、ブーレーズによる同曲の2度の録音のうち、本演奏は最初のものとなる。
2度目のクリーヴランド管弦楽団との演奏(DG)(1991年)が、「春の祭典」の場合と同様に、いわゆるノーマルな名演になっているのに対して、本演奏はまさに若き日の脂が乗り切ったブーレーズならではの先鋭的な超名演。
これほど楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした精緻な表現が施された演奏は比類がないと言えるところであり、「春の祭典」と同様に、ブーレーズによる本演奏によって初めて、同曲が完全に音化されたと言っても過言ではあるまい。
ブーレーズは、当時ニューヨーク・フィルの音楽監督に就任して間もない頃であったが、ニューヨーク・フィルもブーレーズの指揮にしっかりと応え、持ち得る実力を十二分に発揮した最高の演奏を披露しているのが素晴らしい。
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