2014年06月21日
ポリーニのショパン:練習曲集
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LP発売当時「これ以上何をお望みですか」と、かの吉田秀和氏に言わしめた1枚。
完璧!! その一言に尽きる演奏で、こんな凄いエチュードがあるのかと思った。
とある影響力の大きい某音楽評論家とその周辺の者たちによってポリーニの演奏を冷たいとか無内容などと評されているが、その批判は見当違いである。
全くケチの付け所のない最高の演奏であり、単にミスもない、完璧な表現に対し嫌悪しているだけだと勘繰りたくなる。
ポリーニ(1972年収録当時30歳で彼の収録活動初期にあたる)は実に確かなテクニックで客観的にさりとて機械的でなく各曲のタッチにメリハリをつけて弾き進めている。
ポーランドの資質とはニュアンスは当然異なるが、ショパンの情熱を些か鋭く冷たくたぎらせた最高の名演だと評したい。
確かなテクニックをベースに、センチメンタリズムを排し和声の構造を明快に解きほぐす知的なスタイルは、ショパン演奏史にも一石を投じたものだ。
内声部を浮き彫りにした情報量の多いきらびやかな響きとなって聴こえてくるが、圧倒的な輝きだ。
1960年にショパンコンクールに優勝したときのライヴやEMI録音の協奏曲第1番を聴くと、すでにスタイルは完成しているが、ここまで透徹した理性は貫かれていない。
だが、1970年代初めDGに移籍してからは、こうしたクールなスタイルを武器にこのエチュードをはじめ、「ペトルーシュカの3楽章」やシューマンの幻想曲やソナタ、シューベルトの「さすらい人幻想曲」と数々のヒットを飛ばし、独自の世界を築いている。
ポリフォニックな面白さはポリーニには全くないが、この測ったようにキッチリと並べられた音符の洪水の前には、ただただ唖然とするしかない。
客観的・クールなショパンエチュードの金字塔的作品。
ロルティやジュジアーノによる名盤が登場して本CDが若干過去のものになりつつあるかもしれないが、所持しておいてまず損はしないCDだ。
1960年から68年のブランクには、ポリーニは演奏活動を縮小し、ミラノ大学に進学し物理学を学んでいた。
一度音楽から離れ数理の世界を探求したことがプラスに作用したのだろう。
だが、今の若い演奏家はそうした充電が許されなくなっているのだろうか、テクニックはポリーニを超えても、30代〜40代で独自の透徹した境地を貫くところまで育っていけるのか心配なところである。
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