2014年07月19日
カラヤン&ベルリン・フィルのメンデルスゾーン:交響曲全集
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本盤には、カラヤンがベルリン・フィルを指揮して1970年代はじめにスタジオ録音を行ったメンデルスゾーンの交響曲全集が収められている(LPの全集に収められていた「フィンガルの洞窟」が収められていないのが残念である)。
カラヤンは、広範なレパートリーを誇る指揮者であり、しかも独墺系の作曲家の交響曲などについては複数の録音を行うのが通例であった。
しかしながら、メンデルスゾーンの交響曲の録音は本盤のみに限られており、本盤の登場前は、カラヤンはユダヤ人であるメンデルスゾーンを忌み嫌っているなどと言った根も葉もない噂を立てられたものであったのだ。
しかしながら、本盤に収められた演奏を聴く限りにおいては、メンデルスゾーンの交響曲との相性はむしろ良かったのではないかと思えるような素晴らしい名演に仕上がっている。
カラヤンが、その後二度とメンデルスゾーンの交響曲を録音しなかったのは、カラヤン自身も本演奏の出来に満足していたからに他ならないと言えるのではないだろうか。
本演奏の録音当時は、カラヤン&ベルリン・フィルの全盛時代であり、鉄壁のアンサンブル、分厚い豊麗な響きの弦楽合奏、ブリリアントな金管楽器、桁外れのテクニックを誇る木管楽器、そして雷鳴のように轟くティンパニなどが一体となって、オーケストラ演奏の極致とも言うべき圧倒的な音のドラマを構築していた。
本演奏においてもそれは健在であり、その上にカラヤンは優雅なレガートを施し、メンデルスゾーンならではの透明感溢れるみずみずしいオーケストレーションを、これ以上は望めないほどの美麗さで歌い抜いているのが素晴らしい。
楽曲毎に寸評を行っていくと、第1番について、おそらくは同曲演奏史上最も荒々しさを感じさせるような凄みのある迫力満点の豪演を展開していると言えるだろう。
そして、第2番の壮麗な響きは圧倒的な迫力を誇っており、これはオペラを得意とするカラヤンの真骨頂ともいうべき雄渾なスケールの名演に仕上がっている。
「スコットランド」は、とある影響力の大きい某評論家によって不当に貶められている演奏である。
筆者としても、某評論家が激賞するクレンペラー盤(1960年)を名演と評価するのに躊躇はしないが、それに匹敵する名演として本演奏も高く評価したい。
冒頭の序奏部は、クレンペラーに負けないくらいの深沈たる抒情に満ち満ちているし、主部に入ってからの心湧きたつ旋律の歌わせ方も絶妙だ。
第2楽章は某評論家が批判するように快速のテンポ設定であるが、それはクレンペラーと比較してのこと。
他の演奏と同様のやや速めのテンポで曲想を巧みに描いて行く。
第3楽章は素晴らしい音のドラマで、ゆったりとしたテンポによる悠揚迫らぬ歩みは、実に感動的だ。
終楽章のラストでの壮大な盛り上がりも、この名演を締めくくるのに相応しい圧倒的な迫力を誇っている。
「イタリア」は、決して急ぎすぎない中庸のテンポで、カラヤンならではの優雅なレガートを駆使した気品ある名演に仕上がっている。
「宗教改革」は、後年に「パルジファル」の至高の超名演を成し遂げるカラヤンならではの神秘感漂う壮麗さに満ち溢れた至高の超名演だ。
いずれにしても、メンデルスゾーンの交響曲全集は、一般にはアバド&ロンドン響やドホナーニ&ウィーン・フィルによる全集の評価が高いが、筆者としては、本カラヤン盤を随一の名全集と高く評価したい。
音質は従来CD盤でも十分に満足できる高音質であったが、数年前にカラヤン生誕を記念して発売されたSHM−CD盤は、音質の鮮明さといい、音場の広がりといい、素晴らしい水準の音質である。
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