2014年07月04日
グールドのエリザベス朝のヴァージナル音楽名曲選
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1967、68年 ニューヨーク、コロムビア30番街スタジオ及び1971年4月18日 トロント、イートンズ・オーディトリアムで録音(グールド41枚目のアルバム)。
我が国では1972年にリリースされたバードとギボンズのヴァージナル名曲選に加え、1964年、カナダCBC放送のTV番組用に収録された初CD化のスウェーリンクの「ファンタジア」が聴ける。
まるで『バッハ以前の作曲家たち・バードとギボンズのコンサート』と名付けたくなるようなコンサートの一夜をアルバムで再現しているかのような作品である。
グールドといえばバッハの印象があまりにも強いが、バッハの曲以外にも数多くの名演が存在する。
まず、バッハに代表されるバロック音楽以前の、ルネッサンス期の曲をピアノで見事に弾ききった傑作として、本作は真っ先に推薦に値する。
スティングの「ラヴィリンス」やセルシェルの「ルネサンス・リュート曲集」でダウランド等のルネッサンス期作曲家の曲の静謐な響きに心惹かれた人は必ずや本作を気に入るだろう。
輝かしい調子の曲もあるが、総じて落ち着いたしっとりとした味わいの曲が多く、静かな夜を落ち着いて過ごすのに最適の作品集の1つである。
このバッハ以前の音楽を聴いて思うのはグールドが求めたのは、曲に対するアレンジの自由度ではなかったかと思える。
今ではバッハはジャズのミュージシャンに多く取り上げられ、自由なアレンジで演奏される。
それが後期ロマン派の曲ではその自由度がなかったので、グールドは評価しなかったと筆者は考えている。
この時期グールドは、カナダ東部のノバスコシア地方を旅行したときに、列車のクラブカーのなかでウィリアム・フォーリーと知り合い、彼から『草枕』を知り以後漱石に傾倒していった頃だ。
筆者はいつも『草枕』の冒頭と重ねながらこの作品を聴いてしまう。
グールド以外の誰がこのような録音を残すことができたであろうか。
これを退屈と感じる人もいるかもしれないが、その抑制された演奏は終始宗教的な美しさに満ちており、引き込まれる。
特にスウェーリンクのファンタジアの音源は、前述のようにTV放送で、ビデオのコレクションにも収録されているが、演奏中の雰囲気も静謐で、祈りのようである。
このディスクは、グールドならではの創造性という点で、バッハの「インヴェンションとシンフォニア」に並ぶ素晴らしさだと評価したい。
対位法作品に表れたグールドの創造力の新しさが、改めて認識されるのである。
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