2014年07月07日
スラットキン&セントルイス響のチャイコフスキー:3大バレエ全曲盤
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チャイコフスキーの3大バレエは、いずれもスラットキン&セントルイス交響楽団による、素敵な全曲盤が発売されている。
2003年に廉価ボックスになって好評だったのが、さらにお得な価格になって復活した。
スラットキンは1980年にミネソタ管弦楽団との抜粋版を録音していて、それも優れた出来映えであったが、満を持しての3大バレエ全曲録音である。
スラットキンは、セントルイス交響楽団と長期にわたる良好な関係を築き上げ、オーケストラのサウンドをセンスの良い美麗な音響に磨きあげたことでも知られている。
そのことは、これらが録音された頃、スラットキン&セントルイス交響楽団の宣伝文句が「シカゴ響に次いで全米2位にランクされた」というものであったが、それが誇張ではないことが、この録音から伝わってくる。
彼らは特にロマン派から近代作品を中心に人気を集めていたが、スラットキンがロシア系ということもあってか、ロシアものには定評があり、実演でも録音でも高水準な演奏を聴かせていた。
この『くるみ割り人形』『眠りの森の美女』『白鳥の湖』の全曲ヴァージョンでも、洗練された豊かな色彩と華麗なダイナミズム、そしてなめらかなフレージングを駆使してしっとり美しいチャイコフスキーならではの魅力を見事に表現している。
スラットキンとしても一番指揮者として脂がのっていた時期と言えるところであり、快速なテンポながらオーケストラをしっかり統率する様は充実感にあふれている。
演奏スタイルは典型的な西側の演奏で、構成重視で洗練されたものであり、ドラティやティルソン・トーマスなどの演奏に近い。
スラットキンは前述のように、ロシア音楽の一方のスペシャリストと言われ、ロシア人の血を引くだけに、これらの曲を実に甘美でロマンティックな雰囲気で、表現し尽している。
いわゆるバレエの舞台を彷彿とさせる劇場的な表現ではなく、シンフォニックな演奏会風の解釈だが、弦を中心にしたオーソドックスな音楽づくりが、これらの曲の真髄を誤りなく、聴き手にメッセージされるのである。
すなわち、バレエ音楽というより、交響詩的バレエ音楽と言ったらよいだろう。
何よりも各曲の性格を的確につかんで、キャラクタライズするスラットキンの手腕には感嘆させられる。
スラットキンは全体にテンポを遅めにとり、チャイコフスキーのもつ抒情性を強く前面に押し出している。
そういう意味では『白鳥の湖』が出色で、特に第2幕「白鳥たちの踊り」のワルツなど旋律をたっぷりと歌わせているし、「4羽の白鳥たちの踊り」もユーモラスな気分をよく表出している。
第3幕も無難にまとめ、第4幕は「情景と終曲」が実に演出巧者だ。
ロシアの演奏家の3大バレエは名盤が少ないような気もするので、この価格で3大バレエを購入できるのはまさにお買い得であり、多くの人に聴いてもらいたいセットである。
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