2014年07月08日
クナッパーツブッシュ&ウィーン・フィルのモーツァルト:「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」、他
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クナッパーツブッシュ唯一の録音となるモーツァルト「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」(1940年録音)に加え、J.S.バッハの3作品(1944年録音)を収録した、クナッパーツブッシュとウィーン・フィルによるアルバム。
何と言っても「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」が楽しい。
筆者の勝手な思い込みで、クナとモーツァルトの相性は悪いと思っていたのであるが、クナの「アイネ・クライネ」の録音が存在していたというのに本当に驚かされた。
モーツァルトの「アイネ・クライネ」は余計な表情をつけなられない曲だと思っていたが、クナはまさにやりたい放題の大暴れ、しかも大成功を収めたのだ。
これを聴いて怒り出してはいけない。
最初は余りにも珍妙な演奏で腰を抜かしたが、ロココ調のセレナードという固定観念にとらわれずに聴けば、なかなかどうして愉快痛快な演奏ではないか。
フレーズごとに耽美的なディミヌエンドをかけ、各声部の動きにあざといアクセントをかけ、ロマンティックな音楽を聴かせるのは乙な趣向だ。
終曲の途轍もないスロー・テンポ! その中でクナは遊びに遊ぶ。
思い切ったポルタメントはほんの序の口、途中で2ヵ所、モーツァルトが書いた伴奏部の音の長さと表情を変え、主題の対旋律としてしまったのである。
天才モーツァルトの楽譜を変更したのだ! こんな勇気は他の指揮者には絶対にない。
これはもはやクナッパーツブッシュ編曲と言い切ってしまってよいほどで、非常に面白い。
アカデミズムを軽蔑するクナの、「してやったり」という顔が目に見えるようではないか。
彼だから許され、彼だから可能な業ではあるが、それでも、このCDは筆者に「モーツァルトでもここまでできるのだ!」という感銘を与えてくれる。
第1楽章もセレナードとは思えぬくらい深々としており、淋しいけれど神経質に陥らないニュアンスが漂い、何よりも豊かな歌が横溢する。
その歌はメヌエット中間部にも現われるが、特筆すべきは第2楽章の美しさで、細部までこれほど丁寧に愛情をこめぬいた演奏は他に決してない。
できるところでは全部リタルダンドをかけ、息の長いクレッシェンドで盛り上げ、コーダでは何と第1ヴァイオリンをソロに変えている。
クナはワルターのように粋に運ぶことはまるで考えていないが、それでいて泥臭くなっていないのは、どこもかしこも真実だからであろう。
筆者はあえて言いたい。
「アイネ・クライネ」のCDは、特別の興味がない人以外には、ワルター(&ウィーン・フィル)とクナッパーツブッシュの2種類だけ持っていればよい。
そして、彼らの演奏を折に触れて聴き比べれば、音楽創造というものの素晴らしさや秘密が、次々と解明されてゆくに違いない。
交響曲第39番と第40番も悠揚迫らざるスケール感と気品高い演奏で聴く者を魅了する。
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