2014年07月08日
N響85周年記念シリーズ:ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 他(ギレリス)、ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(ゲルバー)
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ギレリスとゲルバー、2大巨匠がN響と共演した貴重なライヴ。
どちらもそのスケールの大きさと円熟ぶりで聴衆に強い感銘を与え、今日でも語り草となっている。
一点も曖昧にしないギレリスの完璧さ、独特のナイーヴな煌めきに満ちたゲルバー、ともに絶品と言えるものであり、その幻の音源が初登場。
サヴァリッシュ指揮のN響ともども、まるでヨーロッパに於けるコンサートを聴いているような感にとらわれる。
ギレリスのライヴ録音は、スタジオでの録音に比べ、ある程度勢いに任せるため、聴いていて面白い場合が多い。
格調の高さと激しさをもった「皇帝」で、ギレリスの元来の特長である音符一つ一つを弾き逃すまいとする姿勢と、ライヴゆえの熱気からくる堅い強音が感じられる演奏である。
特に、第1楽章中間部の強音は凄まじいものがあり、肺腑にくるほどで、また、技巧でねじ伏せるような一面も見せている。
素早く、大きなクレッシェンドで飾られたアルペジオは聴く者を演奏に引きずり込み、後期ソナタ集で見られた禁欲的な音楽ではない。
非常に興に乗った演奏であるが、派手一辺倒な演奏ではなく全体の構成に沿った演奏内容となっており、不自然さがない。
また、テンポをいじることもなく、標準的なテンポ〜少し遅いくらいで纏められており、こういった部分に筆者はギレリスの生真面目さを感じる。
バックについては可もなく不可もないといったところだが、金管の使い方が面白い場面がいくつかあった。
基本的にはピアノの方針に沿った、きっちりと刻むようなリズム中心の音楽づくりで、さっぱりとしている。
ギレリスの歌い回しが少々堅いので、その差分を補給している点は良い。
得意であるらしいバッハのピアノ編曲物が付いているのもうれしい。
一方、ゲルバーは、技巧やパワーは申し分がないが、一番すぐれているのは歌い回しであろう。
強烈に引き付けられるわけではないが、魅力的であり、対旋律の弾き方にも個性が表れている。
本人はこれに気づいていないようであり、どこで盛り上げるかばかりに気を使っているようで、狙いを定めたようにギヤを変えるので何が起こるのかが透けてしまうのだ。
フォルテの部分では惜しげもなく力を注ぐと言った印象で、雑に聴こえる個所もある。
そういった部分をここで聴くと出来が悪いわけではないが、一気に聴いていると気になってしまうのだ。
見得を切ること主眼に置いた演奏と言えるかもしれず、そうした場面での語彙の少なさも見受けられた。
文字どおりガンガン弾いていて若々しいと言い訳できるレベルではあるが、その弾き方がはまる部分は実にスリリングで熱い。
バックはギレリスとの演奏と殆ど同じで、可もなく不可もないといったところである。
両演奏とも音質は、他のN響85周年記念シリーズと同程度で、大手レーベルのスタジオ録音の様な明瞭さはないにしても、音楽を楽しむという点のみに目的を絞れば全く問題ないレベルといって良く、残響が強めのFM録音といった感じである。
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