2014年07月12日

ケーゲル&ライプツィヒ放送響のラヴェル:管弦楽作品集


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ケーゲルという音の匠が創り出した最高のガラス細工のようなラヴェル作品集。

オペラ「子供と魔法」全曲を録音しているくらい、ラヴェルには思い入れが強く、その完璧な作曲を精緻なガラス細工のような演奏で具現化している。

絶美なのはピアノ協奏曲で、ラトルともスタジオ録音しているウーセの魅力的なピアノを得て、夢見るような解釈が楽しめる。

ピアノ協奏曲史上、最高傑作のひとつと言われているラヴェルのこの曲は、ケーゲルの予想以上の生々しい色彩感とエキゾシズムに最後まで耳が離せない。

この曲でオーケストラ・パートをここまで有機的に人間臭く鳴らしきった演奏は他に類例を見ないが、一方のウーセのピアノは、それに比べるとかなり地味に聴こえ、ケーゲルの醸し出す雰囲気とぴったりのニュアンスで、絶妙な味わいを残す。

タッチは硬質で、スタイルも洗練されているが、音の粒立ちから芳醇な香りが立ち込める。

その両者のコントラストと溶け合いの妙こそがこの演奏の醍醐味である。

第1楽章後半、不必要に力まず、音楽を一気に高揚させる両者の連携は完璧。

そして第2楽章が絶品だ。

いかなる感傷をもそぎ落とした氷のように静寂な音楽だが、そこから白い冷気のように哀しみが立ち昇ってくる。

一見淡々としたウーセのフレージングがかえって忘我的な雰囲気を引き出し、聴けば聴くほど内面から湧き出る共感が細やかなアゴーギクとなって現われているのに気付き、味わいもひとしおであり、木管が長いソロを吹く静かなシーンも、他に類例がないほど感動的で、ピアノとオーケストラの相性もよい。

終楽章の機械的な無機質さを感じさせないコクのある表情も、心にしっかり印象づけられる。

この演奏に関して言えば、ピアノの音が冷たいのは確かで、一聴して固い印象だったが、それは、ある意味で間違いだった。

時をおいて聴き直すと、オーケストラの演奏が、まぁ何と表情豊かな演奏をしていることか。

他の演奏が単調に聴こえてしまうほどであり、改めてピアノをオケの一部として捉え直して聴くと、この演奏が別の魅力豊かな表情を有して聴こえてくるのに気付く。

通常協奏曲の名演奏は、ソロの素晴らしさ+伴奏の確かなフォローという形で論じられることが多いのだが、この演奏はそういう図式では収まらない不思議なニュアンスが満ち溢れている。

カップリングの2曲も必聴と言えるものであり、「ボレロ」では、伴奏部分の強調など個性的で、最初のフルート・ソロが不気味なクレッシェンドをするところからただならぬ予感。

管の各奏者の高い技量の素晴らしさに加え、「東独的」とも言うべき独特のアクが自然と顔を覗かせるあたりが何とも味わい深い。

ラヴェルの魔法的な色彩術の象徴と言えるチェレスタが加わる箇所は、精緻さを目指さず、むしろ大掴みな感じであるが、自然とハ−モニーとして溶け合っているのは、オケの技量の賜物であろう。

しかし12分位から、トランペットが主役になって以降のリズムの野暮ったさはメンゲルベルクの同曲の録音を思い起こさせ、思わず吹き出してしまうほどフランス的な洗練とは正反対と言えるものであり、しかもそれを大真面目でやってのけているので、この上なく痛快で「教科書的な名演」に飽きた人は必聴である。

合唱つきの「ダフニスとクロエ」は、克明でたくましく分厚いハーモニーが素晴らしい名演で、 本当にフランス的な良い雰囲気を醸し出した、まさにラヴェルしか書けなかった音楽が存分に堪能できる。

弦楽器が力強くうねっては鎮まるが、特に最後の壮大な盛り上がりが圧巻で、鮮烈かつ痛快、硬派にして官能的、切れのいいリズムで、すべての音がエネルギーの放出を目指して高まっていく。

合唱の存在感も適切で、これでこそわざわざ人声を組み込んだ意味があるというものだ。

ケーゲルはラヴェル作品としては「子供と魔法」を録音していたが、こちらの盤のほうがあらゆる面ですぐれている。

ケーゲルに鍛え上げられたオケの技量も素晴らしく、鳴っている音楽に耳を傾けて欲しい。

これほどまでに暗黒を感じさせるラヴェルは他に無いだろうし、これからも生まれないだろう。

ラヴェル・ファン、ケーゲル・ファンのどちらにも聴いてもらいたいCDである。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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