2014年08月11日
セル&クリーヴランド管のシューベルト:交響曲第9番「ザ・グレイト」
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本盤に収められたシューベルトの交響曲第9番「ザ・グレイト」は、セル&クリーヴランド管弦楽団による2度目のスタジオ録音に相当する。
最初の録音は1957年のものであり、本演奏よりも13年前であることもあり、全体の引き締まった堅固な造型が印象的な硬派の演奏であった。
セルは、先輩格のライナーや、ほぼ同時期に活躍したオーマンディなどと同様に徹底したオーケストラトレーナーとして知られており、そうして鍛え抜いた全盛期のクリーヴランド管弦楽団は、「セルの楽器」とも称されるほどの鉄壁のアンサンブルを誇っていたところだ。
あらゆる楽器セクションがあたかも一つの楽器のように聴こえるという驚異的なアンサンブルは、聴き手に衝撃を与えるほどの精緻さを誇るという反面で、メカニックとも言うべき冷たさを感じさせることも否めない事実であった。
したがって、演奏としては名演の名に値する凄さを感じるものの、感動的かというとややコメントに窮するという演奏が多いというのも、セル&クリーヴランド管弦楽団の演奏に共通する特色と言えなくもないところである。
もっとも、セルも1960年代後半になると、クリーヴランド管弦楽団の各団員に自由を与え、より柔軟性に富んだ味わい深い演奏を行うようになってきたところだ。
とりわけ、死の年である1970年代に録音されたドヴォルザークの交響曲第8番と本盤に収められたシューベルトの交響曲第9番「ザ・グレイト」には、そうした円熟のセルの味わい深い至芸を堪能することが可能な、素晴らしい名演に仕上がっていると言えるだろう。
本演奏においても、クリーヴランド管弦楽団の「セルの楽器」とも称される鉄壁のアンサンブルは健在であるが、1957年の旧盤の演奏とは異なり、各フレーズの端々からは豊かな情感に満ち溢れた独特の味わい深さが滲み出している。
これは、人生の辛酸を舐め尽くしてきた老巨匠だけが描出することが可能な崇高な至芸と言えるところであり、同曲において時折聴くことが可能な寂寥感に満ちた旋律の数々の清澄な美しさは、セルも最晩年に至って漸く到達した至高・至純の境地と言っても過言ではあるまい。
シューベルトの交響曲第9番「ザ・グレイト」の演奏は、どの指揮者にとっても難しいものと言えるが、セルによる本演奏は、演奏全体の造型の堅固さ、鉄壁のアンサンブル、そして演奏全体に漲っている情感の籠った味わい深さを兼ね備えた、同曲演奏の一つの理想像の具現化として、普遍的な価値を有する名演と評価してもいいのではないかとも考えられるところだ。
音質は、従来盤が今一つ冴えない音質で問題があり、リマスタリングを施してもさほどの改善が図られているとは言い難かった。
同時期の名演であるドヴォルザークの交響曲第8番については既にHQCD化が行われ、かなり満足できる音質に蘇ったのにもかかわらず、本演奏についてはHQCD化すら図られないのは実に不思議な気がしていたところだ。
ところが、今般、シングルレイヤーによるSACD盤が発売されるに及んで大変驚いた。
音質の鮮明さ、音圧、音場の幅広さのどれをとっても、これまでの既発CDとは段違いの素晴らしさであり、あらためてSACDの潜在能力の高さを思い知った次第だ。
いずれにしても、セルによる至高の超名演を超高音質のシングルレイヤーによるSACD盤で味わえることを大いに歓迎したい。
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