2014年07月17日

ショルティのモーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(1978年スタジオ録音)


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歌劇「ドン・ジョヴァンニ」は、モーツァルトのオペラという限定付きではあるが、その主要4大オペラの中でも最も劇的な要素を有した作品。

ショルティの芸風は切れ味鋭いリズム感とメリハリの明晰さを特徴としているが、主要オペラの中では最もショルティの芸風に適合した作品と言えるのではないだろうか。

同曲には、フルトヴェングラーなどによる名演なども存在しており、それと比較して、音楽の内容に深みがないなどと言った批判を行うことは容易ではあるが、本演奏のように、楽想を明晰に描き出していくというアプローチによって、他の指揮者による同オペラのいかなる演奏よりも、メリハリのある明瞭な演奏に仕上がっているという点については、公平な目で評価しなければならないのではないかと思われるところだ。

要は、モーツァルトのオペラの場合、音符の数が比較的少なくて様々な解釈を施したくなるものであるが、ショルティのように、特別な解釈を施すことなく、モーツァルトがスコアに記した音符の数々を、一点の曇りもなく明瞭に描き出すことのみに全力を傾注した演奏は、同オペラの演奏としては大変に珍しいとも言えるところだ。

それは、特に歌手陣への配慮によるところも大きいと言えるところであり、オペラを熟知したショルティの深謀遠慮と言った側面もあるのではないかと考えられるところである。

ショルティは、後年にも同じロンドン・フィルほかとともに同曲を再録音(1996年)するところであり、円熟味や奥行きの深さにおいては後年の演奏の方がはるかに上と言えるが、演奏の持つ明晰さという点においては、本演奏の方に軍配があがると言えるのではないだろうか。

もちろん、前述のような音楽の内容の深みへの追求度は著しく低い演奏であると言えることから、同オペラの演奏において、例えばフルトヴェングラーの演奏などのように、各登場人物の心理を徹底して抉り出すなどの彫りの深さを希求するクラシック音楽ファンには物足りなさを感じさせることは想定し得るところである。

しかしながら、モーツァルトの音楽そのものの美しさを味わうという点においては、十二分にその魅力を堪能することが可能な名演と評価するのにいささかの躊躇をするものではない。

そして、本盤で素晴らしいのは、何と言っても歌手陣である。

さすがはオペラを熟知したショルティならではの考え抜かれた的確なキャスティングと言えるところでであり、ドン・ジョヴァンニ役のベルント・ヴァイクル、ドンナ・アンナ役のマーガレット・プライス、ツェルリーナ役のルチア・ポップ、騎士長役のクルト・モルなど、当代一流の豪華歌手陣が最高の歌唱を披露しているのが素晴らしい。

また、必ずしも一流とは言い難いロンドン・フィルも、ショルティの確かな統率の下、持ち得る実力を十二分に発揮した名演奏を展開している点も高く評価したい。

音質も、英デッカによる見事な高音質録音であり、1978年のスタジオ録音とは思えないような鮮度を誇っているのも素晴らしい。

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早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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