2014年07月23日
ベーム&ロンドン響/チャイコフスキー後期3大交響曲集
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
1977年にロンドン交響楽団の名誉会長に推されたカール・ベーム[1894-1981]が、それを記念して録音したチャイコフスキーの後期3大交響曲。
ベームは自分のキャリアの中にチャイコフスキーのレパートリーが無いことを非常に気にしていたようで、DGに対して再三、このチャイコフスキー後期の3作品の録音を希望していたようだ。
しかし、DG側はベームのチャイコフスキーは売れないと判断していたようで、まして同時期にカラヤンもこの3作品をDGに録音していたので、ベームの出番は無かったようである。
それでも再三に渡ってDGに交渉し、ようやくこの時期に名誉会長に就任したロンドン響に白羽の矢が立ったという話(ベームがこの録音のために就任したとも言われている)。
本当は独墺のオケと録音したかったのであろうが、この演奏についてはロンドン響を起用したのが功を奏しているのかもしれない。
もしもこれが独墺系のオケであれば重厚さを増し、ややもすると鈍重になった可能性は十分に考えられる。
3曲とも力感にあふれ、しっかりと指揮者がリードし、堅実で、中味の詰まった大変に立派な演奏で、チャイコフスキーの巧みな書法がしっかりと再現され、迫力も十分。
ベームの職人的能力の最良の面がいかんなく発揮された、見事な出来映えではないだろうか。
中では第4番は、いかにもベームらしい強靭な古典的造型感と明晰性を感じさせる中にも激しい音楽の聴かれるドイツ表現主義風ともいえる演奏。
特に終楽章におけるシンフォニックでありながらも情熱的な世界は必聴の価値がある(第4番にはチェコ・フィルとの凄いライヴもあった)。
一方、第5番と第6番「悲愴」ではドイツ色はいっそう濃くなり、チャイコフスキーというよりもブラームスとかブルックナーに近い雰囲気さえ漂っているが、交響曲の演奏としては、がっちりした造形と端正なフレージングもあって、たいへん立派なものとなっている。
チャイコフスキーが「苦悩」を音楽にするために、どれだけ巧緻に管弦楽を織り成したかが、この演奏からまざまざと聴き取れる演奏とも言えよう。
ドイツ系の指揮者による純ドイツ風アプローチとしては、ほかにクレンペラーやヴァント、シュミット=イッセルシュテット、ケンペなどが知られており、同じドイツ系でも、フルトヴェングラーやカラヤン、ザンデルリンク、マズア、エッシェンバッハなどが、ロシア的表現様式にも配慮した濃厚な演奏を聴かせていたのとは対照的で、最もドイツ的な演奏と言われた。
弦の厚ぼったい響き、テンポ、ダイナミクスとも重量長大級で、一見、田舎風の泥臭さに満ちており、そういう演奏を好む人を大いに喜ばせるに違いない。
スラヴの憂愁も哀愁もないが、チャイコフスキーが目指したドイツ音楽の姿かたちがここにあり、ベームならではのチャイコフスキー像が創り出されている。
聴けば聴くほど味が出る演奏で、特にベーム・ファン向けの個性的チャイコフスキー・アルバムと言えるだろう。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。