2022年11月23日
老巨匠🧓自らの生涯を自省の気持ちを込めて回顧するような趣🥮ルービンシュタイン&バレンボイム🎹ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番&第5番「皇帝」🫅
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ルービンシュタインは、3度にわたってベートーヴェンのピアノ協奏曲全集をスタジオ録音している。
ルービンシュタインはポーランド出身ということもあって、稀代のショパン弾きとしても知られてはいるが、前述のように3度にわたってベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音したことや、生涯最後の録音がブラームスのピアノ協奏曲第1番であったことなどに鑑みれば、ルービンシュタインの広範なレパートリーの中核を占めていたのは、ベートーヴェンやブラームスなどの独墺系のピアノ曲であったと言えるのかもしれない。
本盤に収められたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番&第5番「皇帝」は、ルービンシュタインによる3度目のピアノ協奏曲全集(1975年)からの抜粋である。
最初の全集であるクリップス&シンフォニー・オブ・ジ・エアとの演奏(1956年)や、2度目の全集であるラインスドルフ&ボストン交響楽団との演奏(1963年)と比較すると、本演奏は88歳の時の演奏だけに、技量においてはこれまでの2度にわたる全集の方がより優れている。
しかしながら、本演奏のゆったりとしたテンポによる桁外れのスケールの大きさ、そして各フレーズの端々から滲み出してくる枯淡の境地とも言うべき奥行きの深い情感の豊かさにおいては、これまでの2度にわたる全集を大きく凌駕していると言えるだろう。
このような音楽の構えの大きさや奥行きの深さ、そして格調の高さや風格は、まさしく大人(たいじん)の至芸と言っても過言ではあるまい。
特に、両曲の緩徐楽章の深沈とした美しさには抗し難い魅力があるが、その清澄とも言うべき美しさは、人生の辛酸を舐め尽くした巨匠が、自らの生涯を自省の気持ちを込めて回顧するような趣きさえ感じられる。
これほどの高みに達した崇高な音楽は、ルービンシュタインとしても最晩年になって漸く到達し得た至高・至純の境地と言えるのかもしれない。
ルービンシュタインの堂々たるピアニズムに対して、バレンボイム&ロンドン・フィルも一歩も引けを取っていない。
バレンボイムは、ピアニストとしても(クレンペラーの指揮)、そして弾き振りでも(ベルリン・フィルとの演奏)ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集を録音しているが、ここではルービンシュタインの構えの大きいピアニズムに触発されたこともあり、持ち得る実力を存分に発揮した雄渾なスケールによる重厚にして渾身の名演奏を展開しているのが素晴らしい。
いずれにしても、本盤に収められたベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番及び第5番「皇帝」の演奏は、いずれも両曲の演奏史上トップの座を争う至高の超名演と高く評価したい。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2022年11月24日 08:40

2. Posted by 和田 2022年11月24日 08:45
アルトゥール・ルービンシュタインは1887年生まれ、1982年、95歳の高齢で世を去った名手ですが、このCDは1975年、なんと88歳の録音!もちろん90歳をすぎて、なお活躍をつづけたピアニストは例がないわけではありませんが、ベートーヴェンの「皇帝」をこんなに立派に、こんなにも堂々と弾きのけたのは、一人ルービンシュタインだけです。他のディスクは全く不要と思わせる皇帝の中の皇帝と絶賛したいベートーヴェン。ルービンシュタインは遅いテンポでくっきりと弾きあげ、フレーズを緻密に処理しており、あらゆる表情がぎりぎりの線まで追求されています。かなりゆっくりとしたテンポで、スコアの1音1音を大切にしながら弾きあげた演奏です。そのみずみずしい表情とあざやかな技巧は魅力的で、絢爛豪華な点では最高です。テンポはかなり動かしていますし、旋律の歌わせ方にも癖もありますが、作品を見事に自分の血とし肉としたルービンシュタインの自信が隅々にまで感じられます。彫りの深い「皇帝」であり、ルバートを多用しても音楽の流れが滞ることのない、真に大人物の演奏です。バレンボイムの指揮もこの曲のベストのひとつで、深い呼吸と厚みのある生々しい響きには巨匠の風格が漂っています。第4番は音楽が進むにつれて調子が上がり、大柄で立体的な表現を成し遂げています。バレンボイムもルービンシュタインのテンポによくつけており、少しも淀まず、厚みがあり、十二分に歌い、ときには瞑想や思索さえも実感させます。