2014年07月28日
ホロヴィッツのベートーヴェン;ピアノ協奏曲第5番「皇帝」(ライナー)、ピアノ・ソナタ第14番「月光」、他
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「皇帝」が脂の乗り切った凄い演奏だ。
全盛期のホロヴィッツのピアノがいかに超絶的なものであったのかを窺い知ることができる演奏である。
ホロヴィッツのテクニックは殆ど神業とも言うべき圧巻の凄さであるが、表現力も桁外れであり、ピアノが壊れてしまうのではないかと思われるような強靭な打鍵から繊細なピアニッシモまで、その幅は途轍もなく広い。
変幻自在のテンポ設定はあたかも魔法のようであり、トゥッティに向けての畳み掛けていくような猛烈なアッチェレランドはとても人間業とは思えないような物凄さだ。
ホロヴィッツは、おそらくはあまり難しいことを考えずに、自らの才能の赴くままに演奏しているのに過ぎないと思うのだが、いささかも技巧臭がすることなく、豊かな情感と気高い芸術性を保持しているというのは、全盛期のホロヴィッツだけに可能な驚異的な至芸と言えるだろう。
最晩年のホロヴィッツは、そのテクニック自体が衰えることによって、著しく芸術性を損なった老醜を垣間見せるようになったとも言えなくもないが、全盛期のホロヴィッツは、卓越した技量自体が芸術性をも兼ね備えているという稀有のピアニストであったと言えるのではないだろうか。
このような天才的なホロヴィッツのピアノを、ライナーがしっかりと下支えしているのが素晴らしい。
オーケストラは、手兵のシカゴ交響楽団ではないが、RCAビクター交響楽団を統率して、最高のパフォーマンスを発揮しているのが見事である。
「月光」ソナタでのホロヴィッツは、作品の持つ様式感と、古典的形式感の骨子をしっかりと押さえ、格調を保ちつつ自発性に満ちた自在感ある音楽を生み出している。
そのため、この曲が本来備えている抒情性や幻想性がやや失われたことも否めないが、そこがホロヴィッツのホロヴィッツたるゆえんでもある。
いずれにせよ、しっかりとした構成感の中にこまやかな表情の変化が盛り込まれた演奏であり、聴きなれた名曲が自信に満ちた足どりで展開されてゆく。
チェルニーでは、音の粒が極めて明確に整えられているが、これはペダルの使用を控えているからでもあり、スカルラッティを弾く時のホロヴィッツを思わせる。
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