2014年07月31日

バーンスタインのマーラー:交響曲全集&歌曲集(新盤)


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バーンスタインはマーラーの交響曲全集をDVD作品を含めると3度にわたって録音した唯一の指揮者である。

本盤に収められた全集はその3度目のものであるが、正確に言うと、バーンスタインは本全集を完成する前に惜しくも鬼籍に入ってしまったところだ。

というのも、第8番、「大地の歌」そして第10番の新録音を果たすことができなかったからであり、それ故に、第8番については没後発見されたザルツブルク音楽祭でのライヴ録音(1975年)、「大地の歌」については本盤には未収録、第10番は2度目のDVDによる全集中の演奏(1974年)をCDに焼き直したものが収められているところである。

このような若干の未完成というハンディはあるものの、本全集こそは、あまた存在する様々な指揮者によるマーラーの交響曲全集に冠絶する至高の超名全集と高く評価したい。

バーンスタインは、かつてニューヨーク・フィルの音楽監督の時代には、いかにもヤンキー気質の爽快な演奏の数々を成し遂げていたが、ヨーロッパに拠点を移した後、とりわけ1980年代に入ってからは、テンポは異常に遅くなるとともに、濃厚な表情づけの演奏をするようになった。

それは本全集においても例外ではなく、その演奏は、これまでの1度目、2度目の全集と比較してもテンポの遅さや濃厚さが際立っている。

しかしながら、他の作曲家による楽曲は別として、マーラーの交響曲や歌曲においては、こうしたゆったりとしたテンポによる濃厚さがすべてプラスに作用していると言えるだろう。

そして、バーンスタインのアプローチは、ゆったりとしたテンポや濃厚な表情づけを基軸としつつ、変幻自在のテンポ設定や思い切った強弱の変化、そして大胆なアッチェレランドを駆使してこれ以上は求め得ないようなドラマティックな演奏を行っていると言えるところだ。

マーラーの交響曲のテーマは、楽曲によって一部に例外はあるものの、基本的には死への恐怖と闘い、そしてそれと対置する生への妄執と憧憬であると考えるが、バーンスタイン以上にそれを音化し得た演奏は、テンシュテットによる最晩年の演奏以外には存在しないと言っても過言ではあるまい。

こうした渾身の大熱演が我々聴き手の肺腑を打つのであり、前述のように、第8番や第10番など、1970年代の録音も一部に含まれてはいるが、本全集の各演奏こそは、史上最大のマーラー指揮者であったバーンスタインがその最晩年になって漸く成し得た究極の名演奏と言っても過言ではあるまい。

マーラーに縁があった3つの超一流のオーケストラを起用したのも特徴であり、奥行きのある深沈とした表現が必要不可欠な第9番には北ヨーロッパの楽団ならではのくすんだいぶし銀の音色が魅力のコンセルトへボウ・アムステルダムを起用したり、壮麗な迫力を必要とする第2番にニューヨーク・フィルを起用するなど、各オーケストラの使い分けも実に考え抜かれた最善の選択がなされていると評価したい。

第4番の終楽章ではボーイソプラノを起用するなど、若干のやり過ぎの感も否めないところではあるが、本全集全体の評価を貶めるほどの瑕疵があるわけではないものと考える。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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