2022年11月26日
👨🏻🦲ショルティ統率下のシカゴ響🌎スーパー軍団を認識させるのに🥁十分なヴィルトゥオジティ🎷最大限に発揮🧑🏻💻マーラー:交響曲全集🗽
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本盤には、ショルティが完成させた唯一のマーラーの交響曲全集が収められている。
膨大なレコーディングとレパートリーを誇ったショルティであるが、マーラーの交響曲についても比較的早くから取り組んでおり、1960年代というマーラーが知る人ぞ知る存在であった時代にも、ロンドン交響楽団と第1番、第2番、第3番、第9番、そしてコンセルトへボウ・アムステルダムとともに第4番のスタジオ録音を行っている。
また、第1番についてはウィーン・フィルとのライヴ録音(1964年)が遺されており、既に1960年代にはマーラーの交響曲はショルティのレパートリーの一角を占めていたのではないかと考えられる。
本盤に収められた全集は、ショルティが1970年以降に行ったシカゴ交響楽団とのスタジオ録音のみで構成されているが、このうち1970年及び1971年に録音された第5番〜第8番は、前述の1960年代の各スタジオ録音やライヴ録音と共通する演奏様式であり、他方、1980年〜1983年にかけてスタジオ録音された第1番〜第4番と第9番は、1980年代に入って演奏に若干の奥行きが出てきた円熟の演奏様式であり、演奏傾向に若干の違いがあることに留意しておく必要がある。
もっとも、ショルティのマーラーの交響曲演奏に際しての基本的アプローチは何ら変わりがない。
強靭なリズム感とメリハリの明瞭さは、ショルティの鋭角的な指揮ぶりからも明らかであり、これは、最晩年になっても変わりがないものであった。
したがって、ショルティのマーラーには、どこをとっても曖昧な箇所がなく、明瞭で光彩陸離たる音響に満たされている。
ただ、第5番〜第8番については、全体に引き締まったシャープな響きが支配しているのに対して、第1番〜第4番と第9番には、若干ではあるが、響きに柔和さと奥行きが出てきているように思われる。
いずれにしても、どの曲もショルティの個性が発揮された名演であるが、筆者としては特に第3番、第5番、そして第8番を高く評価したい。
第5番は、本全集の第1弾となったものであるが、筆者はこれほど強烈無比な演奏を聴いたことがない。
耳を劈くような強烈な音響が終始炸裂しており、血も涙もない音楽が連続している。
まさに、音の暴力と言ってもいい無慈悲な演奏であるが、聴き終えた後の不思議な充足感は、同曲の超名演であるバーンスタイン&ウィーン・フィル盤(1987年)やテンシュテット&ロンドン・フィル盤(1988年)にいささかも引けを取っていない。
第8番は、ショルティがシカゴ交響楽団を引き連れてヨーロッパを訪問中にウィーンで録音されたものであるが、精密機械のような豪演を繰り広げるシカゴ交響楽団と圧倒的な名唱を繰り広げる合唱団等が融合した稀有の名演であり、同曲をこれほど壮麗かつスケール雄大に響かせた演奏は他にも類例を見ないのではないかと考えられる。
第3番は、故柴田南雄氏が「燦然たる音の饗宴」と評した演奏であるが(氏は、それ故に内容空虚であることを指摘して、本演奏を酷評している)、これほど本演奏を評した的確な表現はあるまい。
まさに、本演奏は有名レストランでシカゴ交響楽団が出す豪華料理と高級ワインを味わうような趣きがあり、我々聴き手は、ただただレストランにおいて極上の豪華な料理と高級ワインを堪能するのみである。
もっとも、あまりの料理やワインの豪華さに、聴き手もほろ酔い加減で幻惑されてしまいそうになるが、本演奏は、それほどまでに空前絶後の「燦然たる音の饗宴」に仕上がっている。
確かに、故柴田南雄氏が指摘されているように、楽曲の心眼に鋭く切り込んで行くような奥深さには欠けている演奏であるが、聴き終えた後の充足感が、例えばバーンスタイン&ニューヨーク・フィル盤(1988年)などの名演に必ずしも引けを取っているわけでもなく、筆者としてはマーラーの演奏様式の一翼を担った名演として高く評価したいと考える。
そして、これまでにも若干触れてはきたが、本全集の最大のメリットはシカゴ交響楽団の超絶的な技量であろう。
いずれの演奏も、ショルティ統率下のシカゴ交響楽団がいかにスーパー軍団であったのかを認識させるのに十分なヴィルトゥオジティを最大限に発揮しており、各演奏を名演たらしめるのに大きく貢献しているのを忘れてはならない。
それにしても、我が国におけるショルティの評価は不当に低いと言わざるを得ない。
現在では、楽劇「ニーベルングの指環」以外の録音は殆ど忘れられた存在になりつつある。
これには、我が国の音楽評論家、とりわけとある影響力の大きい某音楽評論家が自著においてショルティを、ヴェルディのレクイエムなどを除いて事あるごとに酷評していることに大きく起因していると思われるが、かかる酷評を鵜呑みにして、例えば本全集のような名演を一度も聴かないのはあまりにも勿体ない。
筆者としては、本全集を楽劇「ニーベルングの指環」に次ぐショルティの偉大な遺産であると考えており、英デッカによる極上の優秀録音であることに鑑みても、いまだ未聴のクラシック音楽ファンには是非とも一聴をお薦めしたい名全集と高く評価したい。
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