2014年08月03日

シノーポリ&フィルハーモニア管のマーラー:交響曲全集


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シノーポリが心臓発作で急逝してから約11年の歳月が経った。

まだ50歳代という働き盛りでの急な逝去であったことから、現在においてもそのあまりにも早すぎる死を惜しむファンも多いと聞く。

そのようなシノーポリの遺した最大の遺産は、様々な意見もあろうかとは思うが、やはり本盤に収められたマーラーの交響曲全集と言えるのではないだろうか。

本盤には、1990年に録音された嘆きの歌やその他の主要歌曲集、そしてシュターツカペレ・ドレスデンを指揮した番外編でもあった交響曲「大地の歌」も収録しており、シノーポリがDGに録音したマーラーの交響曲や主要な歌曲のすべてが網羅されている。

シノーポリのマーラーについては賛否両論があるようであるが、筆者としては評価しており、本全集も素晴らしい名全集と高く評価したいと考える。

シノーポリのマーラーへのアプローチは、他の指揮者とは全く異なる実に個性的なものであった。

シノーポリは、精神医学者であり作曲家でもあるという異色の経歴を持つ指揮者であったが、おそらくはそれに起因するスコアリーディングには余人には及ばない凄みがあったのではないかと考えられる。

シノーポリは、マーラーの作曲した複雑極まりないスコアに記されたすべての音符を一音たりとも蔑ろにすることなく光を当て、完璧に音化することに腐心しているようにさえ思われる。

おそらくは、これほどまでに楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした明晰な演奏というのは比類がないと言えるのではないか。

もっとも、ここまで細部に拘ると音楽の自然な流れを損ってしまうということが懸念されるが、シノーポリは音楽がごく自然に流れていくように各旋律を徹底して歌い抜くのである。

要は、細部に至るまでの彫琢と歌謡性の豊かさという2つの要素を兼ね備えた稀有の演奏を成し遂げているということであり、ここにシノーポリのマーラーのユニークな魅力がある。

もちろん、かかるアプローチがうまく適合しない楽曲もある。

例えば、第6番は細部への彫琢の末に成し遂げられた明晰さが、ある種の楽天的な雰囲気の醸成に繋がってしまったきらいがあり、同曲の演奏としてはいささか物足りない出来となってしまっている。

もっとも、かかるシノーポリの芸風に符号した楽曲ではとてつもない名演に仕上がることになり、特に、第2番、第5番、第7番及び第10番は文句のつけようのない名演である。

第2番の終楽章の中間部はいささか冗長さを感じさせる箇所ではあるが、シノーポリの演奏にかかると、同じく軽薄さが指摘されている第7番の終楽章も含め、密度の濃い充実した音楽に聴こえるのが素晴らしい。

また、第5番の楽曲の心眼に切り込んでいくような鋭さも見事である。

そして、第10番は、誰よりもゆったりしたテンポで奥行きのある深沈とした音楽が連続するが、とりわけ後半の強烈な不協和音とその後の天国的な美しさの対比は、聴いていて戦慄を覚えるほどの凄みのある表現であると言えるだろう。

この第10番については、昨年発売されたテンシュテット&ウィーン・フィルによる一期一会の名演(1982年)、そして同じくシノーポリによるシュターツカペレ・ドレスデンとのライヴ録音(1981年)と並んで3強の一角を占める至高の超名演と高く評価したい。

いずれにしても、シノーポリのマーラーは他の指揮者による演奏とは全く異なる個性的な演奏ではあるが、マーラーの交響曲を愛する者であれば一度は聴いていただくことを是非ともお薦めしたい。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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