2014年08月12日
カラヤン&ベルリン・フィルのモーツァルト:ディヴェルティメント第17番、R.シュトラウス:交響詩「英雄の生涯」(1969年モスクワ・ライヴ)
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1969年5月30日 モスクワ音楽院大ホールに於けるライヴ(ステレオ)録音。
全盛期の帝王カラヤンが旧ソ連に乗り込んでの渾身のライヴで、録音にややハンディがあるが、演奏そのものは壮絶な名演だ。
我々は、カラヤンの「英雄の生涯」の名演として、スタジオ録音による1959年盤、1974年盤、1985年盤、ライヴによる1985年盤を知っており、いずれ劣らぬ名演だが、カラヤンはやはりライヴの人。
これまで筆者は、先般テスタメントから発売された1985年のライヴ盤を最も評価してきたが、この1969年盤は、人生の諦観のような味わいを感じさせる1985年盤とは異なり、飛ぶ鳥落とす勢いであったカラヤンの壮年期ならではの覇気に満ち溢れており、独特の魅力を醸し出している。
現時点では、カラヤンの「英雄の生涯」では、このモスクワ・ライヴをベストに推したい。
確かに録音はあまり良くないかも知れないが、この演奏には、絶頂期に入ったカラヤン&ベルリン・フィルの、クライマックスの上にさらにクライマックスを築き上げていく一期一会の凄絶な演奏が記録されている。
第1部「英雄」の覇気あふれる演奏、第4部「英雄の戦い」の敵との総力戦が本当に行われているかのような殺気だった響き(かなりオンマイクでとらえられたスネアドラムの響きが好悪を分かれるかもしれない)が強烈。
もちろん第3部「英雄の伴侶」のゆったりとした愛の歌や第6部「英雄の引退と完成」の諦観を感じさせる晩年の英雄の描写も十分である。
まとまり全体でいうと1974年盤がベストであるが、ここに於けるカラヤン&ベルリン・フィルはテンションが尋常ではなく、特に『戦い』の場面では、トランペットをはじめとする金管の咆哮・ティンパニが炸裂し痛快きわまりない。
それこそ、ソ連的爆演とさえ言えるところであり、晩年のライヴやスタジオ録音では聴けないカラヤンがこの盤に存在する(テスタメントの1970年代のライヴはあまり面白くない)。
生前のカラヤンは、モーツァルトのディヴェルティメント第17番を「英雄の生涯」をはじめとするシュトラウス作品の前プロとしてよく取り上げていたようだ。
十分すぎるほど覇気あふれる演奏に「モーツァルトってこれでいいのか?」と思ったり、「いや、流麗で生き生きとした演奏もモーツァルトの一つの姿なのだ」と思い直したりもするが、その歌い回しの巧妙さには惚れ惚れとしてしまうばかりである。
本公演は、盟友ムラヴィンスキー(2人ともトスカニーニ信奉者で馬が合ったらしい)の熱烈なるラヴコールで実現した公演だった。
カラヤンの演奏は、ムラヴィンスキーの盟友と言うに恥じないものであったことが、これで確認できる。
旧ソ連はカラヤンにとって、決してアウェイではなかったことが、この演奏からもわかるだろう。
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