2014年08月16日
ベーム&ベルリン・フィルのモーツァルト:交響曲全集
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昨年(2011年)はベームの没後30年に当たるにもかかわらず、それを記念したCDの発売は、今月末発売のユニバーサルからのシングルレイヤーによるSACD&SHM−CD盤3点の発売以外には見当たらないところだ。
それでも、我が国においては今もなお熱心なベームファンは存在しているが、本場ヨーロッパでは殆ど忘れられた存在であると聞いている。
生前はオーストリアの音楽総監督やウィーン・フィルの名誉指揮者の称号が与えられ、世代はかなり違うものの当時のスーパースターであったカラヤンのライバルとも目された大指揮者であったにしては、今日の知る人ぞ知る存在に甘んじている状況は極めて不当で残念と言わざるを得ない。
このように、ベームの存在がますます忘れられつつある中においても、おそらく今後とも未来永劫、その価値を失うことがないと思われるCDが存在する。
それこそはまさに、本盤に収められたベルリン・フィルとともにスタジオ録音(1959〜1968年)を行ったモーツァルトの交響曲全集であると考える。
ベームは、モーツァルトを得意とし、生涯にわたって様々なジャンルの楽曲の演奏・録音を行い、そのいずれも名演の誉れが高いが、その中でも本全集は金字塔と言っても過言ではない存在である。
近年では、モーツァルトの交響曲演奏は、小編成の室内オーケストラによる古楽器奏法や、はたまたピリオド楽器の使用による演奏が主流であり、本演奏のようないわゆる古典的なスタイルによる全集は、今後とも2度とあらわれないのではないかとも考えられるところだ。
同様の古典的スタイルの演奏としても、ベーム以外にはウィーン・フィルを指揮してスタジオ録音を行ったレヴァインによる全集しか存在しておらず、演奏内容の観点からしても、本ベーム盤の牙城はいささかも揺らぎがないものと考える。
本全集におけるベームのアプローチは、まさに質実剛健そのものであり、重厚かつシンフォニックな、そして堅牢な造型の下でいささかも隙間風の吹かない充実した演奏を聴かせてくれていると言えるだろう。
ベームの指揮は、1970年代後半に入ると、持ち味であるリズム感に硬直が見られ、テンポが極端に遅い重々しい演奏が増えてくるのであるが(最晩年にウィーン・フィルと録音したモーツァルトの後期交響曲集はこうした芸風が顕著にあらわれている)、本演奏においてはいまだ全盛期のベームならではの躍動的なリズム感が支配しており、テンポも中庸でいささかも違和感を感じさせないのが素晴らしい。
ベルリン・フィルも、この当時はいまだカラヤン色に染まり切っておらず、フルトヴェングラー時代の名うての奏者が数多く在籍していたこともあって、ドイツ風の音色の残滓が存在した時代でもある。
したがって、ベームの統率の下、ドイツ風の重心の低い名演奏を展開しているというのも、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
このような充実した重厚でシンフォニックな演奏を聴いていると、現代の古楽器奏法やピリオド楽器を使用したこじんまりとした軽妙なモーツァルトの交響曲の演奏が何と小賢しく聴こえることであろうか。
本演奏を、昨今のモーツァルトの交響曲の演奏様式から外れるとして、大時代的で時代遅れの演奏などと批判する音楽評論家もいるようであるが、我々聴き手は芸術的な感動さえ得られればそれでいいのであり、むしろ、軽妙浮薄な演奏がとかくもてはやされる現代においてこそ、本演奏のような真に芸術的な重厚な演奏は十分に存在価値があると言えるのではないだろうか。
いずれにしても、本全集は、モーツァルトの交響曲全集の最高の超名演であるとともに、今後とも未来永劫、その存在価値をいささかも失うことがない歴史的な遺産であると高く評価したい。
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