2014年08月21日
カラヤン&ベルリン・フィルのシベリウス:管弦楽曲集
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
カラヤンはシベリウスを得意としており、交響曲(第3番やクレルヴォ交響曲を除く)、ヴァイオリン協奏曲、そして管弦楽曲に至るまで多岐にわたる録音を行っている。
特に、管弦楽曲については何度も録音を繰り返しており、フィルハーモニア管弦楽団との各種の録音に引き続いて、手兵ベルリン・フィルとともに、1960年代、1970年代、そして1980年代と、ほぼ10年毎に主要な管弦楽曲集の録音を行っているところだ。
本盤に収められたシベリウスの管弦楽曲集は、カラヤンによる最後の録音に相当する。
カラヤンによるベルリン・フィルとのシベリウスの管弦楽曲集でも、最もカラヤンの個性が発揮された演奏はまぎれもなく1970年代の演奏であろう。
というのも、1970年代はカラヤン&ベルリン・フィルの黄金コンビの全盛期であったからである。分厚い弦楽合奏、ブリリアントなブラスセクションの響き、桁外れのテクニックをベースに美音を振り撒く木管楽器群、そして雷鳴のように轟きわたるティンパニなどが、鉄壁のアンサンブルの下に融合し、およそ信じ難いような超絶的な名演奏の数々を繰り広げていた。
カラヤンは、このようなベルリン・フィルをしっかりと統率するとともに、流麗なレガートを施すことによっていわゆるカラヤンサウンドを醸成し、オーケストラ演奏の極致とも言うべき圧倒的な音のドラマを構築していた。
1970年代の演奏は、まさにかかる圧倒的な音のドラマが健在であり、どこをとってもいわゆるカラヤンサウンドに覆い尽くされていた。
他方、1960年代の演奏は、ベルリン・フィルにいまだフルトヴェングラー時代のドイツ風の音色の残滓が存在した時代であり、流麗なカラヤンサウンドの中にも適度の潤いが感じられ、いい意味での剛柔バランスのとれたサウンドが支配していた。
したがって、いわゆる北欧音楽らしさという意味においては、1960年代の演奏の方を好む聴き手がいても何ら不思議ではないと考えられる。
これらに対して、本盤に収められた演奏は、1970年代の演奏と比較すると、明らかにカラヤンの統率力に陰りが見えると言えるだろう。
1970年代に全盛期を迎えたカラヤン&ベルリン・フィルの黄金コンビも、1980年代に入るとザビーネ・マイヤー事件の勃発によって亀裂が入り、その後は殆ど修復が見られなかった。加えて、カラヤン自身の健康悪化もあって、この黄金コンビによる演奏にかつてのような輝きがなくなってしまったところだ。
もっとも、本演奏は、1970年代の演奏のような音のドラマの構築においては今一つの出来であり、カラヤン、そしてベルリン・フィルによるベストフォームの演奏とは言い難いものがあるが、他方、カラヤンの晩年の心境を反映した枯淡の境地を感じさせるような独特の味わいがあると言えるのではないだろうか。
したがって、人生の辛酸を舐め尽くした巨匠カラヤンの晩年の清澄な境地が色濃く反映した独特の味わい深さという意味においては、本演奏を名演と評価するのにいささかも躊躇するものではない。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。