2014年08月22日
百万ドル・トリオのチャイコフスキー:ピアノ三重奏曲「ある偉大な芸術家の生涯」[XRCD]
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チャイコフスキーのピアノ三重奏曲「ある偉大な芸術家の思い出に」は、チャイコフスキーの室内楽曲の中での最高傑作であるだけでなく、古今東西の作曲家による数あるピアノ三重奏曲の中でも、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲第7番「大公」と並ぶ至高の名作と言えるだろう。
しかしながら、ベートーヴェンの「大公」と比較すると録音の点数はさして多いとは言えない。
そうした数少ない録音の中でも名演と評価し得るのは、新しいものではウィーン・ベートーヴェン・トリオ盤(1988年)及びチョン・トリオ盤(1988年)、そして古いものでは本盤に収められた演奏であると考える。
本演奏においては何よりも、ピアノにルービンシュタイン、ヴァイオリンにハイフェッツ、そしてチェロにピアティゴルスキーという超大物を据えた(いわゆる百万ドル・トリオ)のが極めて大きい。
本録音の発売に際しては、LPのジャケットの表記において、ルービンシュタインとハイフェッツのどちらを上に記述するかで両者(特にハイフェッツ)がもめたとの逸話が遺されているが、それだけ両者がプライドをかけて本演奏に臨んだということではないだろうか。
実際のところ、同曲は、副題からも窺い知ることができるように、尊敬するピアニストであったニコライ・ルービンシュタインの死を悼んで作曲されたものであることから、とりわけピアノパートが克明に作曲されているのであるが、ルービンシュタインの卓越した技量をベースとしたスケール雄大な演奏に対して、ハイフェッツのヴァイオリンもその技量や気迫において、いささかも引けを取っておらず、あたかも両者による協奏曲のような迫力を誇っている。
チェロのピアティゴルスキーは、持ち味である重厚で人間味あふれる落ち着いた音色で、ルービンシュタインとハイフェッツの火花散るような演奏に適度の潤いと温もりを与えるのに成功していると言っても過言ではあるまい。
いずれにしても、本演奏は、モノラル録音であるというハンディを除けば、現時点でも前述のウィーン・ベートーヴェン・トリオ盤やチョン・トリオ盤をはるかに凌駕する随一の超名演と高く評価したい。
もっとも、今般のXRCD化によって、今から60年以上も前のモノラル録音とは思えないような鮮度の高い音質に生まれ変わった。
ルービンシュタインのピアノタッチがいささかこもり気味なのは残念であるが、ハイフェッツのヴァイオリンやピアティゴルスキーのチェロの弓使いなどが鮮明に再現されるのは殆ど驚異的であり、あらためてXRCDの潜在能力の高さを思い知った次第だ。
今般のXRCD化によって、本名演の価値はますます盤石となったと言えるところであり、同曲演奏史上最高の超名演を、現在望み得る最高の高音質XRCDで味わうことができるのを大いに歓迎したい。
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