2014年08月22日

マッケラスのヤナーチェク:歌劇「利口な女狐の物語」


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近年では村上春樹氏のとある有名小説によって、シンフォニエッタが非常に有名になったヤナーチェクであるが、こうした管弦楽曲や室内楽曲、声楽曲など多岐に渡るジャンルの作品を遺したヤナーチェクの最高傑作は何と言ってもオペラと言えるのではないだろうか。

ヤナーチェクは、自作にモラヴィアの民謡を高度に昇華させて取り入れるとともに、その作品には自然の中での人間の在り方、人間の心情などへの鋭い洞察と言ったものが集約されているが、それらの要素がすべて盛り込まれているのはまさにオペラであると考えられるからだ。

そして、そのような数あるオペラの中でも名実ともに最高傑作と言えば、何と言っても本盤に収められた「利口な女狐の物語」であると言えるのではないだろうか。

というのも、このオペラは主人公である女狐ビストロウシュカなどの動物を通して人間の所業を風刺した寓話劇であり、前述のようなヤナーチェクの作品の神髄そのものをテーマとしていると言えるし、音楽もいかにもモラヴィアの民謡的な語法を活用した魅力的なものであるのがその理由である。

チェコではクリスマスにこのオペラを子ども向きに上映するそうであるが、これを観た子どもたちが本当にこのオペラを理解できているのか疑問に思われるような含蓄のある作品であり、聴けば聴くほどに新しい発見がある内容の濃い傑作であるとも言える。

このようにヤナーチェクの最高傑作とも言える「利口な女狐の物語」であるが、録音は極めて少ないと言わざるを得ない。

本盤を除くと、現在でも入手可能なのは、ラトル&コヴェントガーテン王立歌劇場管(1990年)(ただし英語版)、ノイマン&プラハ国立劇場管(1957年)(旧盤)、ノイマン&チェコ・フィル(1979年)の3点しか存在していない。

もっとも、これらはいずれも名演であるが、ヤナーチェクの権威であったマッケラスがウィーン・フィルを指揮して演奏した本演奏こそが、同曲演奏史上最高の超名演であることは論を待たないところだ。

マッケラスの指揮は、ヤナーチェクの作品を数多く演奏するとともに、楽譜校訂を行ってきたこともあって、厳格なスコアリーディングに基づく楽曲の心眼に踏み込んでいくような彫りの深いものであり、加えてこの指揮者ならではの独特の格調の高さが全体を支配している。

そして、ウィーン・フィルによる豊穣な極上の美演が、本演奏全体に独特の潤いと豊かな情感を付加しているのを忘れてはならない。

歌手陣も充実しており、ビストロウシュカ役の今は亡きルチア・ポップをはじめ、チェコの優秀な歌手陣が最高の歌唱を披露しているのが素晴らしい。

英デッカによる超優秀録音による極上の高音質も、本名演の価値を高めるのに大きく貢献している。

ヤナーチェクのオペラには、「利口な女狐の物語」以外にも最晩年の「死者の家から」など優れた名作が多く、演奏時間も概ね85分〜120分の間に収まることから、歌詞対訳付で鑑賞するのが基本ではあるものの、必ずしも歌詞にとらわれずに音楽だけを楽しむというのも、マーラーの交響曲を鑑賞するような趣きでヤナーチェクの素晴らしい音楽を満喫できるという意味において、是非ともお薦めしておきたいと思う。

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classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

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