2014年09月17日
ショルティのワーグナー:歌劇「ローエングリン」
この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。
本盤に収められた歌劇「ローエングリン」は、ワーグナーの主要オペラをすべて録音したショルティによる一連の録音の掉尾を飾るもの(その他には、晩年の楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のコンサート形式による録音が存在している)である。
ショルティのワーグナーについては、最初期の楽劇「ニーベルングの指環」は別格の名演であるが、その他のオペラの中には呼吸の浅い浅薄な演奏もいくつか存在している。
これはワーグナーのオペラに限らず他の諸曲にも共通していると言えるが(マーラーの交響曲第5番のように、成功した名演もあることに留意しておく必要がある)、そのようなショルティも1980年代半ばになると円熟の境地に達したせいか、奥行きの深い演奏を繰り広げるようになってきたように思われる。
例えば、ブルックナーの交響曲第9番の名演(1985年)などが掲げられるところであり、ショルティもこの頃になって漸く名実ともに真の円熟の大指揮者となったと言っても過言ではあるまい。
本演奏も、そうした円熟のショルティの至芸を味わうことができるスケール雄大な名演と言えるところであり、前述の楽劇「ニーベルングの指環」を除けば、ショルティのワーグナーのオペラの中では最も素晴らしい名演と高く評価したい。
円熟のスケール雄大な名演と言っても、本演奏においても、例によって拍が明瞭でアクセントがやや強めであることや、第2幕におけるブラスセクションによる最強奏など、いわゆるショルティらしい迫力満点の正確無比な演奏を繰り広げているのであるが、ウィーン・フィルによる美演が演奏全体に適度の潤いと温もりを付加させているのを忘れてはならない。
ショルティとウィーン・フィルの関係は微妙なものがあり、必ずしも良好とは言えなかったとのことであるが、少なくとも遺された録音を聴く限りにおいては、両者が互いに協調し合った名演奏を繰り広げていると言えるのではないだろうか。
また、歌手陣も極めて豪華な布陣と言える。
ジェシー・ノーマンのエルザ役には若干の疑問符を付けざるを得ないが、ドミンゴのローエングリン役は意表をついたキャスティングながら見事なはまり役。
ゾーンティンの国王ハインリッヒ役は威厳があって素晴らしい歌唱を披露している。
加えて、軍令使役にフィッシャー=ディースカウを起用するという何とも贅沢なキャスティングは、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
なお、本盤は英デッカによる今はなきゾフィエンザールにおける最後の録音であるという意味においても貴重であり、その鮮明な極上の高音質録音についても高く評価したい。
ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング
フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室。