2014年09月08日

アバドのマーラー:交響曲全集


この記事をお読みになる前に、人気ブログランキングへワンクリックお願いします。



本盤には、アバドによるマーラーの交響曲全集が収められているが、その内容からすると、果たして交響曲全集と称することが可能か疑問である。

アバドは、若き頃からマーラーを得意としており、DVD作品を含め数多くの演奏・録音を行ってきている。

ところが、その録音の経緯をつぶさに見てみると、必ずしも全集の完成を目的として行われたものではないことがよく理解できるところだ。

それは、本全集に収められた各交響曲の録音時期を見てもよく理解できるところであり、第1番はシカゴ交響楽団との演奏(1981年)に次ぐ2度目のベルリン・フィルとの録音(1989年)、第2番はシカゴ交響楽団との演奏(1976年)に次ぐ2度目のウィーン・フィルとの録音(1992年)、第3番はウィーン・フィルとの最初の録音(1980年)、第4番はウィーン・フィルとの最初の録音(1977年)、第5番はシカゴ交響楽団との演奏(1980年)に次ぐ2度目のベルリン・フィルとの録音(1993年)、第6番はウィーン交響楽団(1967年)に次ぐ2度目のシカゴ交響楽団との録音(1979年)、第7番はシカゴ交響楽団との最初の録音(1984年)、第8番はベルリン・フィルとの最初の録音(1994年)、第9番はウィーン・フィルとの最初の録音(1987年)、第10番はウィーン・フィルとの最初の録音(1985年)となっている。

要は、録音年代やオーケストラに何らの統一性がなく、とりあえず交響曲全集に纏めてみたといった類ものとも言えるところだ。

特に、アバドの芸風は1990年のベルリン・フィルの芸術監督就任後、そして2000年の大病の克服後にそれぞれ大きく変化してきており、本盤の全集であれば、第8番については録音自体がなかったということで致し方なかったとしても、第1番、第2番、第5番についてはそれぞれ旧録音を収録すれば、より統一性のとれた全集に仕上がったのではないかとも考えられるところだ。

アバドが最も輝いていた時期はベルリン・フィルの芸術監督就任前であり、この時期のアバドは、楽曲の頂点に向けて畳み掛けていくような気迫や強靭な生命力、そして持ち前の豊かな歌謡性が付加された、いい意味での剛柔バランスのとれた名演の数々を成し遂げていた。

本盤の全集で言えば、第1番、第3番、第4番、第6番、第7番については、そうしたアバドのかつての長所が大きく功を奏した素晴らしい名演に仕上がっている。

もっとも、第9番及び第10番については、マーラーの交響曲の中でも最も奥の深い内容を有した楽曲であり、アバドのこのようなアプローチでは、いささか楽曲の心眼への踏み込み不足の感は否めないところだ。

また、アバドは、ベルリン・フィルの芸術監督就任後は借りてきた猫のように大人しい演奏に終始するようになり、各楽器セクション間のバランスに執拗に拘るアバドと、カラヤン時代の名うての奏者がいまだ在籍していたベルリン・フィルとの間に少なからず軋轢も生じていたように思われる。

そのマイナス要素が顕著にあらわれた演奏が本盤に収められた第5番であり、これはもしかしたらアバドによるマーラーの交響曲のあらゆる演奏・録音の中でも最も出来の悪いものと言えるのかもしれない。

第2番は、ウィーン・フィルとの演奏であることもあって、本演奏の後に録音されたルツェルン祝祭管弦楽団との演奏(2003年)にはさすがにかなわないが、本演奏に先立つシカゴ交響楽団との録音(1976年)と比較すると、アバドの円熟が感じされる素晴らしい名演に仕上がっている。

第8番は、合唱付きの壮麗な迫力が持ち味であり、オペラを得意とするアバドにとってはむしろ得意とする楽曲である。

それだけに、本演奏においては、この時期のアバドとしては劇的な迫力を有するとともに、雄大なスケールを誇る名演に仕上がっていると言えるのではないかと考えられる。

いずれにしても、このように録音時期が異なることに起因するアバドの芸風の変化、また、それによる演奏の出来不出来など、全集としてはかなりの問題を有しているとも言えるが、大半の交響曲については名演と評価しても過言ではあるまい。

ところで、クラシック音楽情報ならこちらがオススメです。
人気ブログランキング



フルトヴェングラーのCDなら、 フルトヴェングラー鑑賞室



classicalmusic at 21:07コメント(0)トラックバック(0)マーラー | アバド 

トラックバックURL

コメントする

名前
 
  絵文字
 
 
メルマガ登録・解除
 

Profile

classicalmusic

早稲田大学文学部哲学科卒業。元早大フルトヴェングラー研究会幹事長。幹事長時代サークルを大学公認サークルに昇格させた。クラシック音楽CD保有数は数えきれないほど。いわゆる名曲名盤はほとんど所有。秘蔵ディスク、正規のCDから得られぬ一期一会的海賊盤なども多数保有。毎日造詣を深めることに腐心し、このブログを通じていかにクラシック音楽の真髄を多くの方々に広めてゆくかということに使命を感じて活動中。

Categories
Archives
Recent Comments
記事検索
  • ライブドアブログ