2014年12月22日
ショルティのモーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」
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モーツァルトを十八番とした巨匠カール・ベームは、モーツァルトのオペラを指揮することの難しさについて指摘をしていたとのことが、故吉田秀和氏の著作の中に記述されている。
その中でも、最も難しいのは、登場人物の心理を深く掘り下げて描き出すことが必要な歌劇「ドン・ジョヴァンニ」や、最晩年の傑作である歌劇「魔笛」を掲げるクラシック音楽ファンも多いのではないかと考えられる。
筆者も、その説に賛成ではあるが、本盤に収められた歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」も一筋縄ではいかない難しさを秘めていると言えるのではないだろうか。
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」のように登場人物は多くなく、むしろ極めて少ないが、それらの各登場人物の洒脱と言ってもいいような絡み合いをいかに巧みに描き出していくのかといった点に、その演奏の成否がかかっていると言っても過言ではあるまい。
要は、オペラの指揮によほど通暁していないと、三流の田舎芝居のような凡演に陥る危険性さえ孕んでいると言えるだろう。
本演奏は、1973年のスタジオ録音であるが、これはショルティがウィーン・フィルとの歴史的な楽劇「ニーベルングの指環」の全曲録音(1958〜1965年)を終え、オペラの録音にますます自信を深めた時期に相当する。
それだけに、ショルティも自信を持って、歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」の録音に臨んだことを窺い知ることができるところだ。
ショルティの芸風は、切れ味鋭いリズム感と明瞭なメリハリが信条と言えるが、ここでは、持ち前の鋭いリズム感を全面に打ち出して、同オペラの洒脱な味わいを描出するのに見事に成功しているのが素晴らしい。
明瞭なメリハリも、本演奏においては見事に功を奏しており、モーツァルトがスコアに記した音符の数々が、他のどの演奏よりも明瞭に再現されているのが素晴らしい。
もちろん、ベームやカラヤンによる、世評も高い同曲の名演と比較して云々することは容易ではあるが、これだけ同オペラの魅力を堪能させてくれれば文句は言えないのではないだろうか。
歌手陣や合唱団も、フィオルディリージ役のピラール・ローレンガー、ドラベッラ役のテレサ・ベルガンサ、フェルランド役のライランド・デイヴィス、グリエルモ役のトム・クラウセ、ドン・アルフォンソ役のガブリエル・バキエ、デスピーナ役のジャーヌ・ベルビエ、そして、コヴェント・ガーデン王立歌劇場合唱団がショルティの巧みな統率の下、圧倒的な名唱を披露しているのも、本名演に大きく貢献しているのを忘れてはならない。
また、必ずしも一流とは言い難いロンドン・フィルも、ショルティの確かな統率の下、持ち得る実力を十二分に発揮した名演奏を展開している点も高く評価したい。
音質も、英デッカによる見事な高音質録音であり、1973年のスタジオ録音とは思えないような鮮度を誇っているのも素晴らしい。
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