2022年12月10日
堅固な造型🏰隙間風の吹かない分厚い響き🕋峻厳たるリズムで着実に進行🫰ベーム&ウィーン・フィル🫶ブルックナー:交響曲第3番《ワーグナー》
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ベームは、いわゆるブルックナー指揮者とは言い難いのではないだろうか。
シュターツカペレ・ドレスデンとともに「第4」及び「第5」、ウィーン・フィルとともに「第3」、「第4」、「第7」及び「第8」をスタジオ録音しており、これ以外にも若干のライブ録音が存在しているが、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームスの各交響曲全集を録音した指揮者としては、必ずしも数多いとは言えないのではないかと考えられる。
しかしながら、遺された録音はいずれも決して凡演の類ではなく、特に、ウィーン・フィルと録音した「第3」及び「第4」は、他の指揮者による名演と比較しても、今なお上位にランキングされる素晴らしい名演と高く評価したい。
ところで、この「第3」(1970年)と「第4」(1973年)についてであるが、よりベームらしさがあらわれているのは、「第3」と言えるのではないだろうか。
ベームの演奏の特色は、堅固な造型、隙間風の吹かないオーケストラの分厚い響き、峻厳たるリズム感などが掲げられると思うが、1970年代初頭までは、こうしたベームの特色が存分に発揮された名演が数多く繰り広げられていた。
しかしながら、1970年代後半になると、リズムが硬直化し、テンポが遅くなるのに併せて造型も肥大化することになっていった。
したがって、スケールは非常に大きくはなったものの、凝縮度が薄くなり、それこそ歯応えのない干物のような演奏が多くなったことは否めない事実である(シュターツカペレ・ドレスデンを指揮したシューベルトの「ザ・グレイト」のような例外もあり)。
「第4」は、そうした硬直化にはまだまだ陥っているとは言えないものの、どちらかと言えば、ウィーン・フィルによる美演を極力生かした演奏と言うことができるところであり、名演ではあるが、ベームらしさが発揮された演奏とは言い難い面があるのではないだろうか。
これに対して、本盤の「第3」は、徹頭徹尾ベームらしさが発揮された演奏ということが可能だ。
堅固な造型、隙間風の吹かないオーケストラの分厚い響きは相変わらずであり、峻厳たるリズムで着実に進行していく音楽は、素晴らしいの一言。
全体のスケールはさほど大きいとは言えないが、ヴァント&ケルン放送交響楽団盤(1981年)よりははるかに雄渾と言えるところであり、これだけの凝縮化された密度の濃い音楽は他にもあまり例はみられない。
金管楽器がいささか強すぎるきらいもないわけではないが、全体の演奏の評価に瑕疵を与えるほどのものではないと考える。
ブルックナーの「第3」の他の名演としては、1990年代に入って、朝比奈&大阪フィル盤(1993年)が登場するが、それまでは本演奏はダントツの名演という存在であった。
朝比奈盤に次ぐのが、ヴァント&北ドイツ放送交響楽団盤(1992年)であると考えるが、本演奏は、現在でもこれら両名演に次ぐ名演の地位をいささかも譲っていないと考える。
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コメント一覧
1. Posted by 小島晶二 2022年12月10日 21:01

2. Posted by 和田 2022年12月10日 21:18
堂々とした風格を感じさせる名演で、ベームならではの質実剛健な音楽づくりにひかれる演奏です。ベームがまだ枯れ過ぎる前の1970年の録音なので、その起伏の大きな音楽運びと張りのある充実したウィーン・フィルの響きは文句なしに素晴らしいですね。ベームは悠揚迫らぬ足どりで、素朴といえるほど素直に旋律を歌わせ、間をたっぷりとって雄大に音楽を構築し、そのなかに内面の感動を彫りの深い表情で表しています。ベームは武骨なほどにブルックナーの形式感覚だけをとらえて演奏しています。彼は、例えばカラヤンのように、現代的な演奏効果などを考えに入れていません。そして、この演奏を聴いていると、音の洪水の中で一種の陶酔を覚えてきます。それは、ブルックナーの音楽そのものにもよることですが、それ以上に、直観的に指揮するベームの力のある演奏によるのです。全4楽章のどの部分をとっても素晴らしく、自然なたたずまいをもって聴き手を説得せずにはおかない演奏です。既に録音から半世紀経過しましたが、色褪せるどころか、ブルックナーの素晴らしさをその原点から確認させる演奏としてますます輝きを増してきているように思われます。この第3番の録音は、第4番「ロマンティック」とともにベームの貴重な遺産のひとつと言えるでしょう。