2014年08月26日
シノーポリのR.シュトラウス:管弦楽作品集
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精神医学を修め作曲家としても活躍したシノーポリの演奏は、まさに精神分析的とも言えるような、楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くした明晰なものであった。
シノーポリは、このような精神分析的なアプローチが効果的なマーラーやシューマンの交響曲において、素晴らしい名演の数々を遺したところである。
シノーポリは、R・シュトラウスについてもオペラをはじめ、数々の管弦楽曲の録音を遺しているが、問題はこのような精神分析的なアプローチが効果的と言えるかどうかである。
R・シュトラウスの管弦楽曲は、その色彩感豊かなオーケストレーションが魅力であることから、その魅力を全面に打ち出した名演が数多く成し遂げられてきた。
特にカラヤンは、手兵ベルリン・フィルを率いてオーケストラ演奏の極致とも言うべき圧倒的な音のドラマの構築に成功したと言えるところだ。
これに対して、フルトヴェングラーは、各楽曲が描いている登場人物の深層心理を徹底的に追求した彫りの深い演奏を成し遂げたと言えるところである。
このように、20世紀の前後半を代表する大指揮者の演奏は対照的と言えるが、シノーポリの精神分析的な演奏は、紛れもなくフルトヴェングラーの演奏の系譜に連なるものと言えるだろう。
シノーポリは、演奏に際して「ドン・ファン」や「サロメ」などの登場人物の深層心理の徹底した分析を行い、楽曲の細部に至るまで彫琢の限りを尽くしている。
しかしながら、かかる精神分析的なアプローチの懸念すべき問題は、細部に拘るあまり演奏の自然な流れが損なわれる危険性があるという点であり、それ故に、テンポが異様に遅くなってしまうことがあり得るということだ。
しかしながら、本盤に収められた諸曲の演奏においては、テンポは若干遅めとは言えるが、音楽は滔々と流れており、シノーポリのアプローチが功を奏した彫りの深い名演に仕上がっていると高く評価したい。
特に、「ドン・ファン」については、シュターツカペレ・ドレスデンによるいぶし銀の音色が、演奏全体に更なる深みと潤いを与えるのに大きく貢献している点も忘れてはならない。
録音は従来盤でも十分に満足し得る音質であり、シノーポリによる名演を、鮮明な高音質で味わうことができるのを大いに喜びたい。
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