2014年08月31日
ショルティ&コンセルトヘボウのマーラー:交響曲「大地の歌」
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ショルティは、マーラーの交響曲を得意としており、数多くの録音を遺しているが、その中でも最良の遺産とされているのは、シカゴ交響楽団との全集(1970〜1983年)であるというのは論を待たないところだ。
ところが、既に発売されている全集(輸入盤)には、何故か「大地の歌」が含まれていない。
本盤に収められた演奏は、ショルティにとってシカゴ交響楽団とともに行ったスタジオ録音(1972年)以来、2度目の録音である。
本盤の演奏は1992年のライヴ録音であることから、ショルティにとって何と20年ぶりの録音ということになる。
第1番〜第4番と第9番については、1980年代前半に再録音を行ったのに対して、「大地の歌」を同時期に再録音しなかった理由は定かではない。
最初の録音によほど満足していたのか、それとも「大地の歌」を録音する時間がなかったのかはわからないが、それはさておき、本演奏はそうした長年の渇きを癒すのに十分な素晴らしい名演に仕上がっていると高く評価したい。
まさに満を持しての録音と言えるものであり、あたかもショルティが録音の絶好のタイミングを窺っていたのではないかとさえ思えるほどだ。
ショルティのマーラーの交響曲演奏に際しての基本的アプローチは、強靭なリズム感とメリハリの明瞭さを全面に打ち出したものであり、その鋭角的な指揮ぶりからも明らかなように、どこをとっても曖昧な箇所がなく、明瞭で光彩陸離たる音響に満たされていると言えるところだ。
こうしたショルティのアプローチは、様相の変化はあっても終生にわたって殆ど変わりがなかったが、1980年代、特にその後半以降になると、演奏に円熟の成せる業とも言うべき奥行きの深さ、懐の深さが付加され、大指揮者に相応しい風格が漂うことになったところだ。
したがって、1992年の演奏は、より一層円熟味と風格が高くなったとも言えるところであり、ショルティならではの鋭角的な指揮振りは健在であるとは言うものの、旧演奏と比較して、前述のような聴き手を包み込んでいくような包容力、そして懐の深さには大なるものが存在している。
加えて、オーケストラにシカゴ交響楽団ではなく、コンセルトへボウ・アムステルダムを起用したのも功を奏しており、同オーケストラの北ヨーロッパならではの幾分くすんだ響きが、本演奏に適度の潤いと温もりを付加させていることを忘れてはならない。
アルトのリポヴシェクやテノールのモーザーも見事な歌唱を披露しており、ショルティの確かな統率の下のコンセルトへボウ・アムステルダムともども、最高のパフォーマンスを発揮していると評価したい。
いずれにしても、本演奏は、ショルティの円熟を大いに感じさせる素晴らしい名演と高く評価したい。
音質は、1992年のライヴ録音であるのに加えて、英デッカによる超優秀録音であること、そして、今般、ルビジウム・クロック・カッティングがなされたことにより、十分に満足できるものとなっている点についても付記しておきたい。
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