2013年09月07日
マルティノン&フランス国立管のサン=サーンス:交響曲全集
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フランスの巨匠指揮者の1人であったマルティノンは、例えば、ウィーン・フィルとともにチャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」の名演(1957年)のスタジオ録音を遺しているなど、広範なレパートリーを誇っていたが、それでもそのレパートリーの中軸に位置していたのはフランス音楽であった。
ドビュッシーやラヴェルの管弦楽曲集などは、今なおマルティノンの代表的な遺産の1つとして高く評価されているが、本盤に収められたサン=サーンスの交響曲全集の演奏も、そうしたマルティノンの貴重な遺産である。
マルティノンは、この全集のうち、交響曲第3番については、本演奏(1975年)の5年前にも、フランス国立放送管弦楽団とともにスタジオ録音(1970年、仏エラート)を行っている。
当該演奏も、サン=サーンスの名声をいささかも貶めることのない名演であったが、EMIにスタジオ録音を行ったフランス国立管弦楽団との本演奏こそは、録音面などを総合的に考慮すると、より優れたマルティノンによる代表的名演と評価したいと考える。
それにしても、フランス音楽の粋とも言うべき洒落た味わいと華麗な美しさに溢れたサン=サーンスの魅力を、単なる旋律の表層の美しさのみにとどまらず、演奏全体の引き締まった造型美などをいささかも損なうことなく描出し得た演奏は、フランス人指揮者によるものとしては稀少なものと言えるところであり、諸説はあるとは思うが、本演奏こそは、サン=サーンスの交響曲演奏の理想像の具現化と評しても過言ではあるまい。
マルティノンは、サン=サーンスの音楽的内容と様式を完全に手中に収めており、演奏は彼の尖鋭な感覚と明晰な造形性の美点が映え、しかも風格豊かだ。
特に交響曲第3番では、マルティノンの知的かつ洗練されたアプローチが、重厚で重々しさを感じさせる演奏が多い中においては清新さを感じさせると言える。
第1楽章第2部の悠揚迫らぬ音楽は見事としか言いようがなく、第2楽章第2部は実に堂々としている。
特における終結部に向けての畳み掛けていくような気迫や壮麗な迫力は、ライヴ録音を思わせるような凄絶な力が漲っているとも言えるところであり、本演奏は、様々な名演を遺してきたマルティノンの最高傑作の1つと称してもいいのではないだろうか。
もっとも、重厚にして引き締まった造型美においてもいささかも不足はないところであり、いい意味での剛柔のバランスのとれた素晴らしい名演と高く評価したい。
マルティノンに率いられたフランス国立管弦楽団も、いかにもフランスのオーケストラならではの洗練された色彩と感覚美をもった演奏を繰り広げている。
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