2014年09月06日
インバル&フランクフルト放送響のマーラー:交響曲第5番
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インバルのマーラーはやはり素晴らしい。
特にこの第5番はインバル&フランクフルト放送響のマーラー演奏における最高傑作と言えるところであり、聴かず嫌いの人にも聴いてみてもらいたい。
都響との演奏も評判が良く、今や国内でマーラーを聴くなら都響の演奏で、と言われるまでのオケの健闘ぶりは素晴らしいのであるが、筆者には都響との熟した演奏よりもこのフランクフルト放響との演奏が与えてくれた衝撃の大きさの方がより強い印象をいまだに残している。
インバルのマーラーの交響曲に対するアプローチは、ありあまるパッションを出来るだけ抑制して、可能な限り客観的な表現を心がけようというものである。
ただ、それだけでは、四角四面の面白みのない演奏になりがちであるが、インバルの場合は、抑制しきれなかったパッションが随所に散見されるところであり、そうしたはみ出てしまったパッションに聴き手が大いなる感銘を受けるのだ。
本盤の第5番の場合、随所に、抑制しきれなかった溢れんばかりのパッションが散見されるところであり、もちろん、バーンスタインやテンシュテットなどに比較すると抑制的ではあるが、インバルとしては相当に劇的な演奏に仕上がっている。
もちろん、インバルならではの厳しい造型、精緻さ、そして各楽器群の整理し尽くされた響きも健在であり、これらを総括すれば、いい意味でのバランスにとれた名演と言うことができるだろう。
インバルのマーラーで感心するのは、楽器のピッチの正確さであり、楽器単位で見事にまとまっている。
この方法なら、どれほど強奏しても音響が濁らずに楽器のパートが見事に聴き取れる。
インバルの方法(微細・精密・現象)だと、共感の度合いが冷静に音化されやすい。
響きが清澄で、一見即物的に聞こえるが、その底辺には(同じユダヤ人ゆえなのか)マーラーへの強い共感を感じる。
正統的で劇的なアプローチの中に、諧謔的で偏執的な卑俗さが混じっている。
その相反する要素をあくまで冷静に描きつつも、作品に対する思い入れを忘れない、まさに理想的な演奏となっている。
当時のフランクフルト放送交響楽団もインバルの確かな統率の下、最高のパフォーマンスを示している。
そして何よりも素晴らしいのは、ワンポイント録音による極上の高音質。
これほどナチュラルな音場で、マーラーの交響曲を味わえるというのは、本盤以外にはなかなか存在しないのではないか。
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